アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 東京農工大学

■ 5年間の事業の成果

情報革命やグローバリゼーションを背景に、物理的な距離を超えて新しい経済圏が構築されようとしています。それは、むしろ言語的・文化的な距離に基づいており、最も著しい経済成長が予想されるアジアにおいても、情報技術(IT)分野では、我が国はその経済圏としてはむしろ米国より遠い位置にあります。しかし、情報技術が産業や社会の基盤であることから、この分野でも我が国は確固たる地位を確保し、引き続きアジアなどの経済発展に一定の貢献を果たす必要があります。そのための大きな柱として、国際社会でリーダシップを発揮する高度な人材の養成が不可欠です。
 一方、国内に目を転ずれば、国内市場の閉塞感の中で、高付加価値製品・サービスを中心としたグローバルな産業構造への転換が急務になっています。世界に先んじて進む少子高齢化と人口減少を迎える我が国が、将来にわたって成長し続け、世界の中で存在感を発揮し続けるためには、人類社会が直面する未知の課題を世界に先駆けて解決に導き、その成果を世界に展開することのできる高度な人材の輩出が必要であり、大学院教育の飛躍的な充実が求められています。
 特に、IT 分野はあらゆる産業の基盤となっているため人材ニーズが高く、そのため、オフショアリングを含め企業の海外進出が近年急速に進展していますが、次世代のリーダーとして付加価値の高い製品やサービスを創造し、グローバルに活躍できるイノベーティブな高度人材が不足しています。そのため、アジア圏から優秀な留学生を迎え、産学官が連携して留学生と日本人学生が将来の見通しをもって互いに切磋琢磨する環境を我が国に構築することが、喫緊の課題となっています。
 日本のものづくり企業・IT企業が強みを持ち、グローバルな高品質競争を行っている先端ものづくりIT(家電、自動車、携帯端末、システム構築)の分野においては、今後のマーケット拡大が期待されるアジア展開を睨み、既に多くの企業がアジア進出を図ってきています。しかしながら、いずれも高付加価値製品・サービスを創出しうる最適なオフショアリング体制の構築やグローバル企業との優秀な人材獲得競争激化という課題に直面しています。これら課題に対応していくためには、高度な専門知識を有し、アジア諸国と日本企業の橋渡し役を担うアジア展開のリーダーの存在が必要不可欠です。
 本事業では、以上の背景認識と人材養成ニーズを踏まえ、能力と意欲の高い大学院留学生を確保した上で、産業界から求められているスキルを有した留学生を養成するために、日本語教育の実施、実践的専門教材の開発と実施、インターンシップの実施などを行い、将来、日本企業においてグローバルに活躍できる留学生を産業界に輩出することを目的として実施してきました。
 5年間の成果としては、自立化後も継続している産学連携専門教育とビジネス日本語・日本ビジネス教育の2つと考えています。
 産業界との連携による産学連携専門教育の構築については、企業から客員教授として講師を派遣いただくことにより、最先端の事例や技術を学習でき、また企業活動における実践的な知識やノウハウを習得できる講義を展開することができました。
 本事業では、全体の評価を行うために、プログラム生に情報処理推進機構による情報処理技術者試験を受験させ、その点数の伸びにより客観的な評価を行うとともに、学生がITパスポート、基本情報技術者あるいはその上の資格を取得できるような支援を行っているのですが、受講者の約半数の10名が基本情報技術者試験に合格し、3名がITパスポート試験に合格しました。
 また、ビジネス日本語・日本ビジネス教育については、これまで本学の日本語教育は大学での日本語の講義を理解するための入口に着目した教育でしたが、本事業では出口を見据えた教育を行うための知見・ノウハウを蓄積できたことです。この知見・ノウハウは自立化後の「就活のための日本語」として継続的に教育を行う体制を構築することができました。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

国立大学法人 東京農工大学

本事業の自立化後のプログラムは、産学連携専門教育(プロジェクト管理実践特論、Webコンピューティング実践特論、組込みシステム実践特論、オープンソースソフトウェア実践特論)、インターンシップ、ビジネス日本語・日本ビジネス教育の3つの教育を柱として、2つの手法により実施しています。  1つ目は、これまでの事業と同様に海外の大学から優秀な学生を選抜し奨学金を支給し実施しています。各専攻(専門分野)のカリキュラムに加えて、アジアエンジニアリングスクールの6科目(プロジェクト管理実践特論、Webコンピューティング実践特論、組込みシステム実践特論、オープンソースソフトウェア実践特論、インターンシップ(各専攻のインターンシップ科目または特別研究他に読替え)、就活のための日本語)全ての科目を履修します。  2つ目は、アジアエンジニアリングスクールの上記6科目について、日本人学生を含め、すでに渡日している一般留学生にも開放を行うことにより、より広くアジア人財資構想で得た知見・ノウハウを提供しています。

【産学連携専門教育】
□ プロジェクト管理実践特論(2単位)

プロジェクトを管理し成功裏に完了させるための活動の考え方を習得します。本科目では、プロジェクト管理の歴史と目的、ソフトウェア開発プロジェクト、プロジェクト管理に必要な活動、WBS(Work Breakdown Structure) の作成とリソース管理、見積りや品質管理など実際のオペレーションなどの項目について具体的な事例を交えて学習します。

□ Web コンピューティング実践特論(2単位)

現代のネットビジネスを支えるWebコンピューティングに関する基礎的な要素技術とWebアプリケーションに関する動作の仕組みを具体的な演習を交えて学習します。またAjax技術やWeb2.0 といった最新の事例やオープンソースソフトウェア、XMLといった最新Webコンピューティングに欠かせない関連技術動向を学習し、最新技術をキャッチアップできるようになるためのスキルを身につけます。

□ 組込みシステム実践特論(2単位)

IT技術の産業界への応用事例を関する組込み系技術、ワイヤレス通信、ITS(高度道路交通システム)、GPS(全地球測位システム)、コンテンツサービス、通信モジュールの最新事例を学習すると同時に、担当教員の国際業務体験やIT 産業の最前線で活躍する複数のゲストスピーカの特別講話を交えて、技術的素養を高めるだけでなく将来の企業経営や技術の第一線での活躍に必要な業務スキルや経営的な視点の向上を図ります。

□ オープンソースソフトウェア実践特論(2単位)

現代の情報技術開発において基盤的位置付けを占めるまでに成長したオープンソースソフトウェア(OSS)に関する基礎的な要素技術と、その開発の仕組みを、具体的な演習を交えて学習します。本講義においてはOSS 開発に欠かせない関連技術動向を学習し、最新技術をキャッチアップできるようになるためのスキルを身につけます。

□ 予習・復習教材

上記4つの講義の予習・復習のために、オンライン教材を作成し活用しています。教材作成には、企業側の意見を中心としつつ、情報処理技術者試験を意識した専門プログラム開発マネージャーによる理論的な解説を含んでいます。

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
□ 就活のための日本語(課外科目)

毎週水曜日に2コマ(1コマ90分)連続で、就職活動を題材とした日本ビジネス教育(1コマ)とビジネス日本語教育(1コマ)を15回シリーズで開催しています。なお、実施にあたっては、参加留学生の学習効果を高めるために、内定を獲得した日本人学生をファシリテーターとして配置し、授業内容の相談・解説および指導を行っています。
〈日本ビジネス教育プログラム〉
 日本での就職活動をテーマに、自己分析、業界・企業研究、会社説明会、筆記試験、エントリーシート、グループディスカッション、グループ面接練習、個人面接練習等内容についてのプログラムを実施しています。
〈ビジネス日本語〉
 就職活動を意識した日本語の授業として、ビジネス場面での敬語の使い方、電話のかけ方、Eメール等会話を中心としたビジネス日本語教育を実施しています。

【インターンシップ】
□ インターンシップ(2~4単位)

インターンシップについては、各専攻のインターンシップ科目(2単位)または、特別研究他(2~4単位)に読替えを行っています。
 期間は、1か月以上の実施しており、成果報告会も実施しています。

【就職支援】

就職支援事業は、「就活のための日本語」の授業において、就職活動で必要になる知識やノウハウの提供を行うことと、授業前後の相談なども行っています。
 個別のエントリーシートなど個別の支援については、各専攻の担当教員がフォローをしています。

【奨学金】

本学独自の奨学金制度【JIRITSU】(企業等から指導教官を通しての学生への奨学金給付)を行っています。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・企業のエンジニアがどういう発想で開発するか、また技術のトレンドを理解することができる。
・日本企業の企業文化・慣習を理解することができる。
・日本企業に就職するための準備や知識・ノウハウを習得することができる。

□ 企業

・日本企業や企業文化を理解した優秀な留学生との接点の創出
・技術者として能力が高い学生との接点を創出

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【参加方法】
 海外:パートナー大学からの推薦
 国内:各科目を履修
 ※詳細は下記連絡窓口へお問い合わせください。

□ 企業

【対象】
留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 1. 留学生インターンシップの受け入れ
 2. 留学生の採用
 3. 留学生の奨学金への協力
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

国立大学法人 東京農工大学 国際交流課
TEL:042-367-5913

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