高度専門留学生育成事業 学校法人 片柳学園 東京工科大学
■ 4年間の事業の成果
日本のコンテンツ産業の市場規模は約14兆円(2006年)に達し、国内産業の重要な一角を形成することとなりました。そればかりではなく、日本のコンテンツ、特にアニメ、マンガ、ゲームは世界的にも独自性が認められ、「Cool Japan」として、文化的にも経済的にも国際競争力を持つまでに至りました。しかし、産業界では、2004 年頃から「すでに頭打ち」という危機感が聞かれるようになり、特に新しいコンテンツを生み出し、国際展開に結び付けられる人材の不足がささやかれ始めていました。例示すると、世界のコンテンツ産業の規模は146兆円(2005 年)であり、北米が全体の41.7%、日本はその次だがシェアは既に減少傾向を示しています。また、日本のGDP の中に占めるコンテンツの割合は2.2%であり、米国の5.1%などと比較すると低いままです。また、コンテンツ産業の市場規模のうち海外売り上げの割合は1.9%であり、これも米国の17.8%と比較すると格段に低い割合です。事実、コンテンツの海外収支(輸出入)ではゲーム以外は輸入過多であり、輸出は年々減少傾向にあります。また特に本年度はゲームに関しても、スマートフォン等の普及により、日本が得意とするコンソールゲーム機上での開発から、オープンプラットフォームにおける世界的な競争が激化し、これまでの日本の優位性が薄らいできました。
我が国のコンテンツ産業のグローバル展開においては、日本とアジア諸国との共同制作やビジネスを橋渡しするブリッジパーソンの育成が喫緊の課題となっています。具体的には、日本のコンテンツ制作企業は、既にアジア地域に制作の一部を発注しているところだが、こうしたアウトソーシングは、制作スキーム、ビジネス慣習等の違いによりトラブルが多く生じています。そこで、日本のコンテンツ制作企業では、現地でのコンテンツ制作を日本企業の意図やスキームに沿って円滑に進める人材、現地での日本のコンテンツの商業展開を支える人材への育成ニーズが大きくなっています。
このような背景を踏まえ、本事業では、我が国のコンテンツ産業の競争力強化を図る観点から、アジア諸国からの留学生を我が国のコンテンツ制作企業のアジア展開における中核的人材として育成することを目的として、日本のコンテンツの制作技術やビジネスを理解し、日本企業の立場でグローバルなコンテンツ制作、ビジネス展開を実現する人材、日本と当該地域の制作技術やビジネスだけでなく、グローバルなコンテンツビジネスを目指す人材、高度な制作技術を理解し、新たなコンテンツに対応できる人材の育成を行ってきました。
5年間の事業の成果としては、3点あると考えています。
1点目は本事業において、コンソーシアム参加企業との連携により、日本のコンテンツ制作技術及びコンテンツビジネスに係る専門教育プログラムを開発できたことです。
また、専門用語集の制作技術用語を英語、中国語、韓国語の3国語で作成し現在も毎年内容を更新しています。留学生向けに教材を作成することができたので、現在は作成した教材を各研究室で共有化しています。
2点目は、海外のトップ大学とであるチュラロンコン大学、キングモンクット大学(タイ)、スラバヤ大学、バンドン工科大学(インドネシア)、ゴットランド大学(スウェーデン)(ウプサラ大学と2013年7月に合併予定)と学部間協定を締結することができたことです。また、この事業が終了後も人材の交流が続いています。チュラロンコン大学については、昨年、今年と連続して4名、6名がインターン生として2か月間学習・研究を行いました。
また、スラバヤ大学では、博士課程の学生を3年ほど前に3か月受け入れを行い、今年度は、サンドウィッチプログラムとして、3~4か月間研究活動に博士後期課程の学生が2~4名の受け入れが決まっています。キングモンクット大学では、昨年3月にシンポジウムを開催しました。
さらに国際交流の展開としてスウェーデンのゴットランド大学(ウプサラ大学と7月に合併予定)との提携をし、大学の教員とワークショップの開催、共同研究発表などを実施するなど海外大学との国際交流は本事業をきっかけに広がりを見せております。
3点目は、産学連携が深まったことです。本校に産業界から講師を招聘し、企業の現場で働く方から教育を受けるという経験は学生にはとても好評でした。自立化後も特別講義として8回分の2回を外部講師の招聘を行い継続して実施しています。
■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容
本事業の自立化後は、事業期間中に実施していた、産学連携専門教育、ビジネス日本語教育、就職支援事業を継続して実施し、全学の留学生が受講できるよう講座を解放しています。
【産学連携専門教育】
・授業名「ゲームコンテンツ」
現在、ゲームを取り巻く環境や技術が急速に変化している。近年はソニー、任天堂、マイクロソフトといった、ゲーム専用機向けゲームや、PC のオンラインゲームが大きく発展し、ゲーム表現技術はより高度化した。さらに、ゲーム専用機の多様化が進み、従来はゲームパッド中心だったインタフェイスも、加速度センサーや赤外線カメラなど多様化している。また、携帯型のゲーム機も登場し、現在では無線通信機能やタッチパネル、Stereo3D、AR と様々なユーザー体験を提供するに至っている.この動きは、従来のゲーム専用機からフィーチャーフォンを経てスマートフォンに広がり、多くのゲームが登場した。一方、従来の枠にとらわれないゲームも台頭してきた。インターネットのソーシャルサービスを土台に、ユーザーのつながりを利用したソーシャルゲームは、PC やスマートフォンをベースに拡大を続けている。さらにはゲームそのものではなく、ゲームのもつ射幸性や継続性を様々な分野に生かすゲーミフィケーションという考え方も注目を集めている。こうした、ゲームを取り巻く最新の環境や技術を理解し、将来のゲーム開発技術やゲームの特性を利用したメディアサービスについて、実際にプロジェクトベースで学ぶ。
・「ビジュアルコンピューティング」
3次元コンピュータグラフィクスには用途によってさまざまな技法があるが、それぞれの特性を基礎理論やアルゴリズムを解説し、その上で実践的な場面での効果的な利用法を学ぶ。特に、コンピュータグラフィックス(CG)の最先端技術のうちから、次のような項目を扱う。(1)映像制作やゲーム制作、Web コンテンツのためのレンダリング、シミュレーション。(2)キャラクターやシーン構成のための3 次元形状モデリング。(3)映像制作に役立つインタラクティブ技術。(4)コンテンツ制作、ヒューマンインタフェースなどを応用の場として、画像処理・コンピュータビジョンの技術とCG技術の接近・融合を視野に入れた、有用なイメージメディアとコンピュータビジョンの基礎と応用。本講義によって、CGやビジュアルコンピューティングに関係した英語論文を理解すること、それらの関連する研究動向をまとめることができるようになることを目標とする。
・専門教材
各研究室で留学生への専門教育を行えるよう、以下の教材を作成して運用しています。
■ 講義用資料
「グローバル・コンテンツ・プロデュース」講義資料
「留学生のためのマスターワークショップ(3DCG編)」
「留学生のためのマスターワークショップ(ゲーム制作編)」
「留学生のためのマスターワークショップ(コンテンツ・ディベロップメント編)」
「ディジタルアニメ制作技術用語集(英語編)」(収蔵用語)
「ディジタルアニメ制作技術用語集(中国語編)」
「ディジタルアニメ制作技術用語集(韓国語編)」
「コンテンツ工学用語集(英語編)」
「シナリオライティングの黄金即用語集(英語編)」
【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
・日本語上級
日本語能力試験N1の留学生を対象に、高等教育に対応できる日本語能力として、新聞や雑誌、ニュースなどの生教材を使用していきます。
また論理的な意見の展開、小論文の作成など練習も取り入れながら、総合的に高度な日本語の習得を目指します。
・専門用語集の制作
コンテンツに係る専門用語集の作成を他言語にて制作して活用しています。適宜更新を行うことで
「ディジタルアニメ制作技術用語集(英語編)」(収蔵用語)
「ディジタルアニメ制作技術用語集(中国語編)」
「ディジタルアニメ制作技術用語集(韓国語編)」
「コンテンツ工学用語集(英語編)」
「シナリオライティングの黄金即用語集(英語編)」
【インターンシップ】
インターンシップについては、本事業に参加した留学生をきっかけに、受け入れ企業から奨学金を付与する3か月の長期インターンシップを実施しています。
対象は修士2年生とし、4月~10月の間に週3回程度の実習となります。
【就職支援】
「キャリアサポートセンター」主催による、留学生向け就職支援活動を実施しています。
就職支援活動については、就職ガイダンスと10回シリーズの留学生向け就職講座を実施しています。
また、個別のキャリアカウンセリングについては、専門職の就職対応となるので業界・企業動向に詳しく、企業とのネットワークも持っている担当の教員が行っています。
■ 就職ガイダンス
年2回開催しています。主に日本の就職活動の流れや採用試験の内容等の総論についての説明を実施しています。
■ 留学生向け就職講座
全10回の講座で採用活動に合わせた自己分析、エントリーシート、面接等について実施するとともにプレゼンテーションやグループワークなども取り入れた実践的な演習も実施しています。
第1回 第一印象と身だしなみ 自己紹介1分
第2回 就職活動の流れ 履歴書指導
第3回 自己分析とエントリーシート
第4回 就職活動とマナー 敬語
第5回 企業研究とプレゼンテーション
第6回 グループワーク
第7回 プレゼンテーション予行
第8・9回 プレゼンテーション発表
第10回 模擬面接
■ 留学生、大学、企業が参加するメリット
□ 留学生
・コンテンツ業界を志望する留学生に高度な専門技術の習得が可能
・コンテンツ産業におけるインターンシップ・就職について日本企業との接点を創出
□ 企業
・優秀で高度な専門技術を有した国際人材との接点を創出
・先端的な研究成果の活用
■ 留学生、大学、企業の参加方法
□ 留学生
【対象】
就職支援については、ガイダンスに参加
※詳細は下記連絡先に問合せ下さい。
□ 企業
【対象】
留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
1. 留学生インターンシップの受け入れ
2. 留学生の採用
3. 奨学金の協力
4. コンテンツ参議用に関わる産学共同研究
※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。
■ 連絡先
学校法人 片柳学園 東京工科大学
TEL:042-637-2111
E-mail:kondo@stf.teu.ac.jp