アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 九州大学

■ 4年間の事業の成果

資源エネルギーの有効活用と環境技術(地球環境対策技術)は、機械、電気、化学、材料など様々な学問分野が有機的に連携することにより、その発展が促されるものであり、九州大学は、この技術分野に積極的に取り組んでおり、優位性を有しています。
 近年、中国をはじめアジア諸国の成長は著しく、世界の成長センターとなっている反面、世界で最もエネルギー需要を急増させつつある地域であるとともに、大気や水質の汚染やCO₂の増加が深刻化しています。このようなアジア諸国における生産活動の一層の拡大に伴う、資源・エネルギーの有効活用、公害の防止・除去等のエネルギー・環境問題は、一国一地域に止まらず地球的課題として21世紀の人類に取って最も深刻な課題であり、一刻も早く国際社会の協力の下、全地球規模で取り組むべき最重要課題の一つです。
 かかる問題に対して、政府の「新成長戦略」(平成22年6月開催決定)において、「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」を掲げ、地球温暖化対策など低炭素社会実現に向けた取り組みなどを強力に推進しています。
 こうした中、エネルギー・環境に関連する市場の急速な拡大、また、エネルギー環境を意識したものづくりが求められてくることから、この分野でソリューションをもつ我が国企業がアジア諸国でビジネス展開し、それぞれの国・地域に技術・製品を提供することで、一企業の発展に止まらず、日本、アジア、世界における環境と共生する経済社会の確立に貢献できると考えています。
 このような背景の中、産業界からは、海外戦略のキーパーソンや本社の幹部候補生として、留学生が持つ語学力、現地でのネットワーク・商習慣知識などの高いスキルを持つ人財の需要は高まっています。
 本プログラムにおいて、目標とする人材像は、日本企業・日系企業のものづくり等のビジネスシーンで活躍する人財であり、かつクールアース推進の視点を十分意識した、資源の再利用、省エネ、生産効率などに配慮したものづくりができる人財です。
 本プログラムでは、基礎能力としてビジネス日本語能力、日本社会・文化事情、日本ビジネスルールを習得しているとともに、工学を基礎として、エネルギー・環境分野における専門基礎知識と実践の能力、国際的な展開ができるための創造力、独創性、マネジメント能力、科学技術が世界に与える影響を十分理解できる総合的視野を有する人財育成を目標として事業の推進を行ってきました。
 本プログラムの5年間の成果としては、3点挙げられます。
 1点目は、参加した留学生の就職率です。1期生~3期生までの39名参加学生全員が日本・日系企業に就職することができました。
 本事業では、留学生が国際人としての使命感と我が国産業界の企業人として責任感などの素養を身につけるため、「AQ塾」を実施し、座学としてグループディスカッション、模擬面接、エントリーシートの書き方などの指導を行うとともに、留学生OB・OG等との意見交換等を盛り込んだプログラム参加企業への「見学会」や、地域に根ざす地域企業とのマッチングを行う「就職支援セミナー(合同企業説明会)」の開催、留学生向けの個別キャリアカウンセリング等により、就職活動日本の就職活動の理解から将来のキャリアを見据えた就職先の選定などの支援を実施した成果だと考えております。
 2点目は、企業とのネットワークを構築できたことです。本事業を実施する際に産業界との連携を重視し、地域の企業を中心に12社が参加する運営委員会を立ち上げ、事業推進の助言や産学連携専門教育における講師の派遣などの関係構築を行いました。
 また、運営委員会の他にも留学生採用・インターンシップ及び見学会などの受け入れに協力を頂く企業群として約30社のご協力を頂くことで産業界のニーズを踏まえた人財育成プログラムを推進することができました。
 3点目は、産学連携専門教育カリキュラムの構築し本事業終了後も継続していることです。これまでのカリキュラムは専門知識の習得に重点が置かれていましたが、本プログラムでは、企業が取り組んでいる最先端の技術開発やプロジェクト並びにビジネス戦略など産業界に対する視野を拡大させる科目を開講してきました。実践的な能力を育成するために企業の専門家による設計演習や実験計測なども取り入れることで、学内外から評価の高いプログラムを構築することができました。
 本事業についは、平成24年度からプログラム開始時に、工学府、システム情報学府、システム生命科学府、総合理工学府及び統合新領域学府オートモーティブサイエンス専攻の修士1年、博士後期1・2年に在籍する留学生を対象に「産業工学コース」を設置しています。
 本コースは、日系企業に就職意志のある能力・意欲の高い留学生に対して産学連携専門教育やビジネス日本語教育等を実施し、日本の産業界で活躍できる高度外国人材の育成を推進することを目的に実施しており、学内で募集の後書類審査、面接審査を経て10名程度の選抜を行い2年間のカリキュラムで運営しています。
 授業科目は選択科目である、エネルギー・環境工学特論第一(2単位)、日本ビジネス研修(2単位)、ビジネス日本語・科学技術日本語演習(2単位)、企業連携インターンシップ(2単位)、日本産業特論(2単位)、工学解析・計測特論第一(2単位)、工学解析・計測特論第二(2単位)、IT応用第一(2単位)、IT応用第二(2単位)、技術開発マネジメント(2単位)、推奨科目のintercultural communication(2単位)の中から10単位を取得が修了要件となっています。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

国立大学法人 九州大学
・エネルギー・環境工学特論第一(選択科目2単位)

エネルギー・環境分野の世界情勢や将来展望、研究開発中のプロジェクトや製品などの最新情報について、企業専門家による講義科目を開講しています。
 また、エネルギーと環境に配慮したモノづくりの現状を産業毎にわかりやすく解説します。

・日本産業特論(選択科目2単位)

講義の内容は、日本の産業発展の歴史や技術戦略をメーカーの実例を交えながらの紹介や、日本経済における製造業の位置づけと産業構造の変化を統計デ ータに基づいて分析・解説を行います。
 また、21世紀におけるモノづくり産業の発展戦略の解説、企業訪問や現場視察等を行います。

【産学連携専門教育】
・工学解析・計測特論第一(選択科目2単位)

高性能化と環境負荷低減が求められるエネルギーシステムの例としてエンジンを取り上げ、その開発に必要な計測技術を紹介します。高出力化に耐え得る設計構造と環境性能の主要課題の一つである振動・騒音低減を取り上げ、目標達成のための詳細な取り組みを講義します。

・工学解析・計測特論第二(選択科目2単位)

発電プラントや化学プラントで用いられる管群を内蔵した熱交換機で発生する振動・騒音の発生状況をビデオや実験装置で体験し、その発生メカニズムと防止対策を理解します。

・IT応用第一、第二(選択科目各2単位)

情報工学を専門としない留学生を対象とした講義・演習です。PCを用いた日本語文書の作成等の日本語文章の作成等の指導を行う情報リテラシ教育に始まり、 コンピューターハードウェアの基礎的な知識とプログラミング、さらには要求定義に始まり設計、実装に至るまでのソフトウェア開発工程を取り上げます。

・技術開発マネジメント(選択科目2単位)

エネルギー・環境問題を解決するモノづくりについて学習します。
 また、企業戦略と実際の研究開発体制、マネジメントプロセスについて理解します。具体的には、新製品の開発事例をビジネスモデル設定、投資判断、開発経緯、技術リスクの克服、投資回収の観点から理解します。

・intercultural communication(推奨科目2単位)

国際主義、世界主義、多文化主義の基本概念を学び、コミュニケーションの意味を理解します。講義は主に英語で行い日本語も使用します。社会心理面からは コミュニケーションプロセスの現実問題を挙げ、概論をもとに議論します。

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
・ビジネス日本語・科学技術日本語演習(選択科目2単位)

日本社会、日本企業文化に関するテキストや新聞記事を読み、日本社会一般についての知識を深めるとともに日本語で情報を読み取る力を身につけることを目的としています。また、読解で読んだテキストの内容をまとめることにより要約する力、読解後に自分の意見をまとめさせることで、基本的な日本語の作文力や日本語での表現力を育成します。さらにメールの書き方やエントリーシート作成を通じて、公的な表現方法を学習します。

・日本ビジネス研修(選択科目2単位)

就職活動や入社後社会人として必要とされる日本語能力、コミュニケーション能力の獲得を目指します。正しい状況判断に基づいて、自分の考えをきちんと述べられるよう、日本人の考え方、文化・企業のあり方などコミュニケーションの前提となる知識を増やしながら会話の能力を向上させていきます。
 また、学生と社会人の違いを理解し、日本企業が求める人材像の理解、ビジネスマナーのベースとなるエチケットマナーの基本スキルの習得、基本マナーを使い ビジネスマナーの習得、仕事の仕方の基本、就職活動に必要な面接の受け方などを習得します。

【インターンシップ】

インターンシップは、希望者のみ本科目を選択し九州グローバル産業人材協議会と協力のもと実施しています。また、アジアに進出している日系企業で2週間~1ヶ月間の国際インターンシップも実施しています。

【就職支援】

就職支援については、これまで本事業で蓄積したノウハウ・知見を生かし、全学府の留学生を対象に「AQ塾」を継続して実施しています。留学生のキャリアカウンセリングや、講義を中心に展開しています。
 同塾では座学としてグループディスカッション、模擬面接、エントリーシートの書き方などの指導を行うとともに、留学生OB・OG等との意見交換などを盛り込んだプログラム参加企業への「見学会」、地域に根ざす地域企業とのマッチングを行う「就職支援セミナー(合同企業説明会)」、留学生向けの個別キャリアカウンセリングを実施しています。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・実践的な専門知識、スキルを習得することができる。
・日本企業に就職するための準備や知識・ノウハウを習得することができる。

□ 企業

・ビジネスシーンで通用するビジネス日本語能力や専門知識を持つ留学生との接点の創出

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【対象】
 プログラム開始時に、工学府、システム情報学府、システム生命科学府、総合理工学府及び統合新領域学府オートモーティブサイエンス専攻の修士1年、博士後期1・2年に在籍する留学生で課程修了後に日本企業に就職する意志があるもの。
【参加方法】
 平成25年度募集は終了(平成26年度募集は平成26年3月予定)
 ※詳細は下記連絡先に問い合わせください。

□ 企業

【対象】
 留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 1. 留学生インターンシップや企業見学会の受け入れ
 2. 留学生の採用
 3. 留学生向け合同企業説明会への参加
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

九州大学 国際部 留学生課
TEL:092-642-2139

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