高度専門留学生育成事業 学校法人 立命館 立命館アジア太平洋大学
■ 5年間の事業の成果
グローバルに展開する多くの日本企業(海外現地法人を含む)は、国際競争力を強化するため、また、それぞれのグローバルな事業戦略実現のための国籍を問わない人材獲得のため、いわゆる「グローバル採用」に積極的に取り組んでおり、あわせて採用後の外国人人材の有効な活用方法・育成方法を模索しています。
現在、これらの企業が日本の社会科学系学部新卒の留学生に期待している主な職能要件は、海外との「ブリッジ」機能及び「マネジメント」機能です。
企業に求められる人材はグローバルな視野を持ち、多文化や多様性についてはもちろんのこと、日本の企業文化やビジネス習慣も理解した上で、企業の付加価値創造を担う、グローバル・リーダーシップを具備するイノベーション人材として、①日本と各エリア・現地との橋渡し及びエリアの組織管理ができる「エリア・マネジャー」であり、②グローバルなビジネス環境でビジネス展開や業務推進ができる「グローバル・マネジャー」です。
このような背景から「グローバルビジネスリーダー育成プログラム」(GBLP)は、これまでの本学における教育・研究活動の成果を活かして、日本企業の留学生に求める「ブリッジ」的な機能を果たすスキルや、グローバルな経営環境下での「マネジメント」スキルの力量を形成させることを目的に事業を展開してきました。
5年間の成果としては、大きく分けて2つあります。一つ目は、ビジネス教育やビジネス日本語教育の効果であり、プログラム修了生のほぼ100%が内定を獲得できたことからも有効性が実証されたと考えており、この経験が自立化と呼応するカリキュラムの改革にも影響を与えています。
カリキュラム改革実施を前にした2010年度には、本事業の経験や内定者の日本語能力から日本で働くことを求める留学生に大学が提供する「ビジネス日本語」の目指すべき水準、到達すべき日本語運用能力のレベルが具体的な指標として見えてきました。
それを踏まえて、卒業後の日本企業就職希望者を念頭に、2011年度より日本語教育をWトラック化し、高度な日本語運用能力を担保できるよう高度で実践的な「キャリア日本語」が学部科目に設置されたことにより、自立化後の汎化された留学生プログラムとして提供されています。
二つ目は、産学連携による連携企業との連携強化です。
これまで企業との連携については、インターンシップや就職支援の部分での接点が多かったのですが、本事業の実施を通じて、連携企業との懇談において企業との接点機会が格段に増えており、カリキュラムの効果検証の部分に産業界からの意見を多く取り入れられたことで、カリキュラムがより実践的なものにブラッシュアップできたことです。
また、連携企業の方が講師として授業にも参加することで、最新の企業動向や求める人材像等の情報を留学生に提供していただけたことも非常に大きな効果であったと考えています。
■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容
自立化については、これまでのクローズした科目としてではなく、開発したカリキュラムと本事業にて蓄積した知見やノウハウを学内全体の留学生にopen化することにより実施しています。
また、以前に比べ、就職支援(キャリアオフィス)と教学(アカデミックオフィス)の一体的運営が重要視されるようになり、就職と教学が相乗的に高めあう科目やプログラムの設置に取り組んでいます。
【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
□ キャリア日本語Ⅰ(4単位)
日本の就職活動について知識を深め、就職面接やエントリーシート作成に必要な日本語能力を養うと同時に、自己分析や企業分析を通して自分の能力・適正に合う職業について考察することをねらいとしています。
授業の到達目標としては、以下の5点としています。
1. 現実に起きる日本語の会話を聞いて理解し、自然な表現ややりとりを身に付け使えるようになる。
2. 就職面接や企業人との交流場面で適切なコミュニケーションができる。
3. 目的に合ったメールが書けるようになる。
4. 日本社会や文化、企業について理解し、自分の意見を簡潔に述べることができる。
5. 自己PRや志望動機を簡潔にまとめ履歴書を書くことができる。
授業方法については、前半は自然な日本語の聞きとり練習を行い、モデル会話を使ってロールプレイをしたり、資料請求・説明会参加希望・面談のお願い・お礼状・欠席願い・お詫びなどのEメールの書き方を学びます。また、自己分析に基づいた自己PRを作成し、面接の場面でも伝えることができるように口頭練習を行い、それをビデオに録画して、振り返りを行います。
後半は、ビジネス用語及び待遇表現を学び、先輩や企業の方と交流をしたり、興味のある業界や企業分析を通して情報を収集し、前半で行った自己分析と合わせて志望動機を作成します。また、新聞記事を読んだり、インターネットのニュースを利用し自分の興味や気になることについて意見や感想を述べる等、より実践的な運用の練習をします。
□ キャリア日本語Ⅱ(2単位)
キャリア日本語Ⅰで実施した「自己分析」「企業研究」を踏まえ、志望動機を書く上で必要な「職業観」を考えるグループワークや課題を実施し、各自が就職活動のための「自分軸」を形成します。
また、就職活動に向けた実践的な練習を通して、話す練習、敬語、マナー、グループディスカッションの能力を養うことをねらいとしています。
授業の到達目標としては、以下の4点としています。
1. 自己分析や企業分析を深め、志望動機を簡潔にまとめ口頭やエントリーシートで説明できる。
2. 社会人としての基礎的な待遇表現やマナーを身につけ、適切なコミュニケーションができる。
3. ビジネスで使用される実務的な表現、書式を学び文書が作成できる。
4. 分かりやすく簡潔に要点をまとめ文章や口頭で他者に伝えることができる。
授業方法については、グループワークやペアワークを通してクラスメートから学び合うとともに、企業説明会開始に先立ち、実際のパンフレットを使用して、語彙を増やし、復習クイズによって定着を図ります。
また、即答力と簡潔に話す力を伸ばす練習のために、実際の面接で聞かれる内容を中心に(面接カード使用)1分スピーチをほぼ毎回行います
。
さらに、企業の方や内定した先輩との交流を通して、就職活動や就業後の情報を収集し、説明会や交流の後、形式に沿ってレポートを書くことにより実践的な運用の練習をします。教員が個別面談をし、ES添削、面接練習なども実施します。
【就職支援】
就職支援については、ガイダンス、会社説明会(オンキャンパス・リクルーティング)、キャリアカウンセリングのサポートを在籍する留学生に実施しています。また、「キャリア日本語」受講者については、ビジネス日本語教員による個別簡易キャリアサポートも実施しています。
1. ガイダンス
□ 段階別のキャリアガイダンス
「新入生キャリアガイダンス」対象:1回生 4月
「就職活動キックオフガイダンス」対象:3回生 6月
「就職活動ガイダンス」対象:3回生 10月
キャリアガイダンスについては、新入学時、3回生の春、秋季に実施しています。それぞれの時期に合わせた内容で、就職活動に向けての準備早期に行えるような支援を実施しています。
□ スキル講座
「SPI対策講座」対象:3回生
毎年3回生100名程度を対象に開催している講座で、6月中旬から12月上旬の間(夏休み期間を除く)に週1日開催しています。独自の回答テクニックを伝授するため、SPI対策で重要な「スピード」、「正確さ」を向上することができます。
□ その他
「トップ講演会」
国際的な企業のトップマネジメントや各界のリーダーを講師に招いて「トップ講演会」を開催しています。講演会には、毎回数百から千名を超える学生が出席し世界の情勢や経済への理解を深めています。また、行政やビジネスの最前線で活躍されている講演者に社会の現場で求められる人財像を学び、より明確な目的意識を持って将来のキャリア形成につなげるための手がかりとしています。
2010年 武田薬品工業株式会社 代表取締役社長 長谷川 閑史 氏
2011年 三井物産株式会社 取締役会長 槍田 松瑩 氏
2. オンキャンパス・リクルーティング
企業・団体の人事担当者の方に、会社説明会・筆記試験・面接といった採用の一連の流れを、キャンパス内で実施する独自のシステムです。
1つの時間帯には1社のみオンキャンパス・リクルーティングを実施しています。会場提供のみならず、学生の募集・受付・履歴書等の集約・当日の学生誘導・資料配布などすべてを大学側で運営しています。海外現地拠点との面接は学内のテレビ会議システムを利用して実施しています。2010年度は延べ400社もの企業・団体が来学され、国内外での多くの採用につながっています。
3 .個別キャリアカウンセリング
キャリアオフィスには約20名のスタッフ(キャリアカウンセラー2名)が常駐しており、個別の相談を行っています。学生1人当たり10分~30分程度で履歴書、エントリーシートなどの添削や自己分析等に関する個別相談、模擬面接など学生の要望に応じた対応をしています。
また、メールや電話の相談も受け付けています。学生の相談内容は、個人カルテに記入し次回以降の相談時に対応できるようキャリアオフィス内で共有化されています。
4. ビジネス日本語教員による個別簡易キャリアサポート
ビジネス日本語教育と就職支援事業は密接な関係があります。ビジネス日本語教育においては、日本語教員がエントリーシートの書き方や自己PRの仕方なども教えており、授業外においても個別にエントリーシートの添削や模擬面接等の相談を受け付けています。
日本語教員も日本語の表現力などの観点からの指導はできますが、企業が求める内容やレベルについては判断がつかないこともあるため、キャリアオフィスと連携しながら学生の指導をしています。
5. その他就職支援
就職活動においては、首都圏・大都市圏への就職活動が多くなり就職活動における宿泊費は留学生にとって負担が大きくなります。本学では、卒業生や関わりの深い企業などの協力により、東京などでの安価な宿泊先の斡旋をしています。
また、本学は在学期間中から在校生、OB・OGのネットワーク構築に注力しており、多くの留学生がこのネットワークを通じて、首都圏・大都市圏に居住するOB・OGを頼り長期滞在を行うケースもあります。
■ 留学生、大学、企業が参加するメリット
□ 留学生
・日本企業に就職するための知識・ノウハウが身に付く
・日本企業に就職するためのビジネス日本語能力を習得することができる
・在学期間中に様々な業界の企業人との接点をもつことができる
□ 企業
・世界各国の留学生との接点の創出
・外国人社員受け入れのためのケアに関するノウハウを得ることができる(住居・生活・精神面等)
・企業からの評判の高い留学生のレベルを体感し情報交換することができる
■ 留学生、大学、企業の参加方法
□ 留学生
【対象】
日本企業に就職の意思がある本学留学生
【参加方法】
①キャリア日本語については科目履修
②就職支援については、キャリアオフィスへ要問い合わせ
□ 企業
【対象】
留学生のインターンシップ受入や連携講座実施、GCEP参加や採用意向をもつ企業
【参加方法】
①留学生インターンシップの受け入れ
②オンキャンパス・リクルーティングへの参加
③企業連携講座やGCEP(グローバル社員育成研修)の実施
④求人情報の提供
※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。
■ 連絡先
学校法人 立命館 立命館アジア太平洋大学 学長室
TEL:0977-78-1107
E-mail:gblp@apu.ac.jp