高度専門留学生育成事業 国立大学法人 東京工業大学
■ 6年間の事業の成果
世界の産業はボーダレス時代を迎え、アジア地域の産業の成長は目覚しいものがあります。産業界はアジアを中心とした海外事業展開を加速させる一方、昨今の新しい産業は多くの技術革新を内包し、高度な技術を持ったグローバル人材を確保することが喫緊の課題となっています。一方で、我が国の人口は2004年をピークに減少傾向の局面に入り、将来の持続的な成長を確保するためには、一人当たりの生産性の向上などの新たなイノベーションが求められています。
アジア等諸外国に目を向けると、豊富な若年人口と各国の大学に在籍する優秀な学生が数多く在籍しており、こうした人材の獲得は今後の企業の成長、とりわけアジア等に進出しようとしている企業にとって重要な経営資源となる可能性を秘めています。このような優秀なアジア等での人材の獲得競争はすでに世界規模で行われており、多くの欧米有力企業では各国の大学に直接働きかけて学生の獲得に力を注いでいます。
こうした背景を受けて、産官学における優秀な理系留学生の受入・育成体制の整備・拡充が急務であります。本学は本事業の題目を「グローバル環境下での優秀な留学生人財の発掘・育成・支援事業」とし、人材の発掘、人材の育成、就職の支援の3本柱から成り立っています。すなわち、本学が持つアジアネットワークをより一層強化し、アジアから優秀な人材を発掘します。さらに、留学生が希望する大学院各分野の専門教育に加えて、企業ニーズに即した産学連携教育、ビジネス日本語教育、インターンシップ教育等の実践的教育プログラムを開発して、留学生を育成します。就職支援では、従来の就職説明会に加えて留学生の就職動向調査を行い、就職支援体制を整備・拡充して日本企業への就職を容易にします。
本事業において目指す人材像は、(1)高度な専門性をもつ人材、(2)優れた技術コミュニケーション能力を持つ人材、(3)日本型ビジネスモデルを理解し、リーダーシップを発揮できる人材、(4)本学の伝統「蔵前の気風」を持つ"手を動かせる"人材です。
そのため、(1)各専攻で行う専門教育に加えて企業ニーズの高い理系全般の専門知識と実習、(2)企業でよく用いられるビジネス日本語力の習得、(3)日本企業文化・働き方への対応力の養成、に力点を置いたカリキュラムを編成しました。
6年間の本事業の成果としては、2点挙げられます。
1点目は、本事業を通じて留学生支援体制の再構築が全学ベースで行われるきっかけとなったことです。これまで、留学生の学内支援体制は、複数の部署による分担体制により、留学生の対応を行ってきました。本事業では、入り口から出口までの一貫教育を行うことで、全部署横断型の体制の必要性から一元的な機能を構築しました、本学でも今後の留学生増加に対応するために、本事業で蓄積した部署横断体制の構築に向けたきっかけとなったことが大きな成果といえます。留学生支援機能の部署横断体制のメリットとしては、大学側においては、すべての情報が一元管理することが可能となり、効率的に支援を行えることであり、留学生にとっては、ワンストップで対応が可能となり、きめ細かいケアの実現が可能となります。
2点目は、本事業をきっかけに優秀な留学生をリクルーティングする体制を構築できたことです。本事業のリクルーティング事業においては、従来の大学間協定に加えて大連理工大学、同済大学との大学間交流協定を締結しました。また、華中科学技術大学、国立インドネシア大学、チュラロンコン大学、大連理工大学、同済大学においては、現在も担当者ベースで優秀な留学生の送り出しの協力を頂いております。
今後優秀な留学生を招聘するためには海外大学との連携が必要であり、本事業を通じてアクティブな人材交流の関係構築を行えたことが成果と言えます。
■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容
本事業の自立化後は、事業期間中に実施していた、産学連携専門教育、ビジネス日本語教育、日本ビジネス教育、就職支援事業を継続して実施し、全学の留学生が受講できるよう講座を解放しています。
また、現在、留学生を包括的に支援するための組織改革の準備を行っています。具体的には、留学生に関わる、産学連携(インターンシップ、就職支援)、キャリア教育などを横断的に行うセクションの構築を予定しています。
【産学連携専門教育】
・産学連携特論第一(前期 2単位)
企業に就職し、将来開発・設計・企画などの部門で活躍するには、マーケットイン(顧客第一、品質第一)、摺り合わせ型技術開発、製造現場主義など日本の技術マネージメントの特徴とその長所・短所を理解しておくことが重要であり、本講義では、企業を理解するため、マーケティング、組織、研究開発、ファイナンスなどの観点から講義する。
産学連携特論は、各専攻、各学科で開講する科目を充当する、テーマは、①技術経営戦略第一(技術経営系)、②開発ものがたり(機械系)、③事業創出論(経営系)
・産学連携特論第二(前期 2単位)
本講義では、企業を理解するため、マーケティング、組織、研究開発、ファイナンスなどの観点から講義する。
産学連携特論は、各専攻、各学科で開講する科目を充当する、テーマは、①技術経営戦略第二(技術経営系)、②計測制御技術のイノベーションとマネージメント(機械系)、③マネージメント特論、④材料を知る(経営系)、⑤ベンチャービジネス特論(大学院共通)、⑥化学工業R&D(大学院共通)
【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
・日本語と社会Ⅰ(前期 大学院留学生科目)90分×15コマ
本講義は、本事業で実施していた、「技術日本語」の後継授業として実施しています。本講義は「自分たちの日本への見方」、「日本歴史の理解」、「現代社会の理解」3つの視点より実施しています。
「自分たちの日本への見方」については、日本に対するアンケートを行い、その結果から外国人にとって日本の社会がどう見えるかを議論します。
「日本歴史の理解」については、かなり古い時代から、江戸時代ぐらいまでで留学生にも理解しやすいような素材を用いて、日本の歴史の概要を把握してもらいます。また、過去において日本と関わりのあった外国人より日本人、日本社会の考え方、見方を見直して、日本がどのように見られてきたかをたどり直します。
・日本語と社会Ⅱ(後期 大学院留学生科目)90分×15コマ
本講義は、留学生が社会人として日本社会に加わった時、必要される仕事に関係した日本語能力ばかりでなく、社会人としての基礎的な知識、更に考え抜く力、前に進む力などの総合的な能力を高めることを目標としています。
授業は、留学生の就職活動入門や日本企業で内定を獲得した先輩OB・OGの講話、他の人に自分をどう紹介するか、グループディスカッションなどを通じてビジネス日本語運用能力の育成とともに、就職活動の知識習得も行います。
【就職支援】
・求人情報の収集
留学生向けの求人情報を収集し、学生支援課が運営する留学生メールマガジンにより、本学に在籍する留学生に配信しています。
・内定者調査
毎年6月に本学留学生全員を対象に内定状況、就職先希望、就職活動の方法などの調査を実施し、進路動向の実態把握と日本企業への就職傾向を把握することにより、今後の留学生に対する就職支援に役立てることを目的に実施しています。
■ 留学生、大学、企業が参加するメリット
□ 留学生
・日本企業の仕事の仕方、慣習など企業理解及び、ビジネス日本語の習得が可能。
・日本企業に就職するための準備や知識・ノウハウを習得することができる。
□ 企業
・優秀な留学生との接点の創出
・日本企業の文化を理解しビジネス日本語能力を習得した留学生との接点を創出
■ 留学生、大学、企業の参加方法
□ 留学生
【参加方法】
希望する各講座を受講することが可能
※詳細は下記連絡先に問合せ下さい。
□ 企業
【対象】
留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
1. 留学生インターンシップの受け入れ
2. 留学生の採用
※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。
■ 連絡先
国立大学法人 東京工業大学 学生支援課
TEL:03-5734-3011
E-mail:gak.sie@jim.titech.ac.jp