アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 北海道大学

■ 4年間の事業の成果

札幌-千歳-苫小牧-室蘭を中心とする道央地域は、自動車産業をはじめとするものづくり産業が全道の70%以上、また、加工組合立業の50%が集積し、さらに同地域の製造品出荷総額は出荷総額の55%を占める等、北海道における重要な工業集積地域となっています。
 道央地域では、近年の旺盛な投資意欲や同地域の有するポテンシャルの高さを追い風に裾野が広く、経済的な波及効果の高い自動車産業を中心に集積が進みつつあります。それ故、同地域が全道をリードする産業集積地域になるためにも、進出企業が安心して質の高い労働力を確保できる環境づくりや、関連企業を含めた同地域のものづくり産業の活性化を図ることが喫緊の課題となっています。こうした産業集積の形成・高度化を通じ、北海道経済に加え、我が国経済のイノベーションを活性化させ、経済構造の転換や持続的な発展が可能な産業構造へと再構築されていくことが期待されています。
 なお、同地域に進出している企業の多くは、グローバルに展開している企業であり、隣国の大連等に生産拠点を設ける等、海外顧客とも直接あるいは間接的な関係を有しています。しかし、新分野・新市場等を目指して、付加価値の高い製品を市場に供給し、国際競争力を高めていくためには、技術者の専門技術の高度化や多様化が求められており、特にものづくり産業においては、顧客満足度の高い製品を低コストで納期どおりに提供することが求められています。したがって、グローバルな視点に加え、生産管理技術などの専門性を有する技術系人材の育成・確保が大きな課題となっています。
 こうした現状に鑑み、本事業では総合大学としての強みを有する大学として、過去の留学生育成などの実績を踏まえつつ、海外の優秀な人材を積極的に呼び込み、日本人にない発想と高度な加工技術、生産管理、品質管理、現場カイゼンの技術・ノウハウ等を身に付け、海外向け製品/海外拠点生産製品の開発能力と現地対応能力を備えた人材の育成を行うことにより、道内企業はもちろんのこと、我が国のリーディングカンパニーで活躍する人材を育成することを目標として事業を実施してきました。  4年間の成果としては、産学連携専門教育においては、専門教育で行う技術的な講義だけでなく、グローバルな視点に加え、生産管理技術などの専門性を有する技術系人材の育成を目的としプログラム開発を行いました。
 具体的には、企業間の競争の特徴や戦略、マーケティング、会計などの知識を通じて現代の企業経営を学習する「企業と仕事特論」や、プロジェクトリーダーとして必要なマネジメント知識を習得する「技術マネジメント特論」、グローバル経営に関する基礎知識、国際法に関する知識、国際調達とサプライチェーンに関する知識、クロスカルチャー・コミュニケーション能力を習得する「グローバルマネジメント特論」の3科目を開発し、外部講師を招聘して実践的な教育を行うことにより、産業界のニーズに対応した教育カリキュラムを構築し、自立化後も継続して単位化し、本学工学院の日本人学生、留学生が幅広く受講できるよう開講することができました。
 ビジネス日本語、日本ビジネス教育においては、本事業が開始される前は、中級までのクラスの運営でしたが、本事業を通じて就職を見据えた日本語の運用能力を育成するためには、もう一段上位の日本語教育の必要性を実感したため、本事業にて蓄積したノウハウや知見を基に平成23年度の秋季より自立化の一環として国際本部・留学生センターへ運営を移管し、全学の留学生を対象に開講科目として実施することができました。
 平成23年度は50名の定員に対して約100名の受講希望者があったため、プレースメントテストの点数、日本語学習歴により選抜を行い実施しました。
 就職支援については、企業との接点を創出し、また個別の手厚いキャリアカウンセリングを実施することにより高い就職率を残すことができ、本取組を継続すべく平成23年度に工学院内に就職企画室を創設し合同企業説明会の企画・運営を行うとともに、担当教員によるキャリアカウンセリングを行う体制を構築し、日本企業に就職を希望する留学生の手厚い支援を行う体制を整えることができました。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

国立大学法人 北海道大学

本事業の自立化後のプログラムは、産学連携専門教育(企業と仕事特論、技術マネジメント特論、グローバルマネジメント特論)、インターンシップ、ビジネス日本語教育、就職支援事業の4つの事業を柱として、2つの手法により実施しています。
 1つ目は、これまでの事業と同様に優秀な学生を選抜し実施しています。各専攻(専門分野)のカリキュラムに加えて、6科目(企業と仕事特論、技術マネジメント特論、グローバルマネジメント特論、ビジネス日本語A/B、インターンシップ第一・第二)全ての科目を履修したプログラム修了者には、ディプロマ(修了証書)を授与します。
 2つ目は、北大フロンティアプログラム科目である、企業と仕事特論、技術マネジメント特論、グローバルマネジメント特論及び留学生センター開講科目のビジネス日本語A/Bを一般学生にも開放を行うことにより、より広くアジア人財資金構想で得た知見・ノウハウを提供しています。

【産学連携専門教育】
□ 企業と仕事特論(2単位/北大フロンティアプログラム科目)

企業間の競争の特徴や戦略、マーケティング、会計などの知識を通じて現代の企業経営について説明でき、かつ会社において実践できるようになることを目標とします。
 また、キャリア開発、リーダーシップ、チームビルディングなどビジネスパーソンとして必要な能力の重要性を理解し、企業においてこれらの能力を速やかに発揮できる人財となることを目標としています。
 授業内容については、現代の競争と経営戦略、マーケティング、企業経営と会計及び原価計算、企業を取り巻く諸問題、キャリア開発、リーダーシップ、チームビルディングの項目について学習し、複数の外部講師による対面式とeラーニング方式によるブレンド授業により進めていきます。

□ 技術マネジメント特論(2単位/北大フロンティアプログラム科目)

技術者が企業で活躍するために必要な技術に関係するマネジメントの概要を理解することで、プロジェクトリーダーとして必要なマネジメント知識を身につけることを目標としています。
 授業内容については、知的財産論、研究開発論、資源と環境、ものづくりと品質管理、生産システム事例研究、プロジェクトマネジメントの項目について複数の外部講師により行います。

□ グローバルマネジメント特論(2単位/北大フロンティアプログラム科目)

グローバルな舞台で活躍するためには、グローバル経営に関する基礎知識、国際法に関する知識、国際調達とサプライチェーンに関する知識、クロスカルチャー・コミュニケーション能力などが必要であることを理解させるとともに事例研究も含めて学習します。授業内容については、グローバルマネジメント概論、海外活動と法務、国際調達とサプライチェーンマネジメント、クロスカルチャー・コミュニケーション、グローバルマネジメント事例研究の項目について複数の外部講師により行います。

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】

ビジネス日本語・日本ビジネス教育は、平成23年度より国際本部・留学生センターへ運営を移管し、全学の、日本での企業等への就職やビジネスの世界で活躍することを計画している留学生を対象に開講科目として実施しています。
 開講期間は、1学期(4月~8月)2学期(10月~2月)で週2回、1回2コマ(1コマ90分)で行っています。運営は、2クラス(1クラス25名)にて運営しています。
 1学期に開講する授業では、以下の3点の習得、養成を目指します。

1. ビジネス場面で必要となる日本語力
2. 日本のビジネス環境、文化についての知識理解
3. 社会人として必要とされる行動力(積極性、協調性、発信力等)

 授業の内容としては、就職活動の準備段階のための基礎的なものとなっており、情報収集、電話・メール連絡、エントリーシート作成、面接、グループディスカッション、プレゼン、レポート作成等で必要な口頭表現能力および読み書き能力を高める練習や、業界・企業、ビジネス慣習、キャリアプラン等について学び、主体的に考え行動し、チームで働く能力を養うことを目的とした講義、個別練習、グループワークを実施します。
 2学期に開講する授業では、日本で就職活動を行う際に必要な知識、日本語力の習得・養成を目指します。
 授業の内容としては、就職活動に特化したものとなっており、就職活動に必要な情報収集、エントリーシート作成、面接、グループディスカッション、プレゼンテーション等で必要な能力を高める活動を行います。具体的には、就職活動の基本的な知識、就職活動に必要な情報収集方法、業界分析、企業分析、自己分析、エントリーシート作成、個人面接、集団面接練習、グループディスカッション練習を実施します。

【インターンシップ】
□ インターンシップ第一 (工学院共通科目 1単位)
□ インターンシップ第二 (工学院共通科目 2単位)

インターンシップ第一、第二の振り分けについては、実働5日~14日以下のインターンシップを第一とし、実働15日以上のインターンシップを第二として取り扱います。
 到達目標としては、大学外の国内企業等において、専門領域に関連した一定期間のプロジェクト参加を含む就業体験をすることにより、専門の学問領域が実際に活用される現場と大学院における学習と研究の関係や意義を深めるとともに、技術者あるいは研究者の社会的責任を自覚し、また自らの就業意識を高めることとしています。
 授業は、下記内容にて実施しています。

1. オリエンテーション:科目履修のガイダンス及び事前指導
2. 派遣先開拓支援:インターンシップ派遣先に関する情報開示とマッチング支援
3. 派遣前教育:受入先での対応マナー、安全確保および保険加入の指導
4. インターンシップ:研修先のプログラム実施
5. 事後指導:体験報告及び事後指導

【就職支援】

就職支援事業については、平成23年度より工学院・工学研究院に就職企画室を設置し、企業の講演や交流会を行う「産業・技術フォーラム」を企画運営するなど、学生と企業の接点創出を目的としたフォーラムを開催しています。
 また、担当教員、本学キャリアセンターによるキャリアカウンセリングなどの個別のフォローを行うことで日本企業への留学生の就職を支援しています。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・日本企業に就職するための高度な日本語能力の習得をすることができる。
・日本企業で活躍するための知識・ノウハウを習得することができる。

□ 企業

・優秀な留学生とのインターンシップを介した接点の創出
・日本語レベルが高く、日本の企業風土等を学んでいる優秀な留学生の獲得

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【対象】
 北海道大学工学院に在籍する外国人留学生又はそれ以外の外国人留学生のうち工学研究院に所属する教員が指導する者
【参加方法】
 上記対象者向けに広報を行い、募集・選抜を実施します。
 選考要件としては、
 1. 日本語の授業に参加可能な語学力を有していること。(日本語能力試験2級程度)
 2. 日本企業もしくは海外の日系企業への強い就職意思があること。
 3. GPA2.5以上(4点満点)であること。
 ※詳細は下記連絡窓口へお問い合わせください。

□ 企業

【対象】
 留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 1. 留学生インターンシップの受け入れ
 2. 留学生の採用
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

国立大学法人 北海道大学 工学系事務部 教務課 大学院担当
TEL:011-706-6121

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