アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 名古屋工業大学

■ 5年間の事業の成果

日本の自動車産業は、アジアにおける現地生産拠点を拡充しており、ここ数年の経済状況と少子化という社会情勢の中でこの傾向は加速しています。さらに急激な円高拍車をかけて今後もアジアを中心とした生産体制の定着が予測されます。
 海外展開を持続させるためには、日本と現地の懸け橋となる海外人材の育成確保が必要不可欠であり、将来日本人に代わって現地の幹部となる要員の育成が課題となっています。
 そこで、名古屋工業大学では、自動車産業に精通し、かつ日本理解とグローバル感覚を兼ね備えた自動車産業のスーパーエンジニアを養成することを目的に事業を開始しました。  5年間の事業の成果としては、大きく3点あると考えています。
 1つ目は、カリキュラムの構築です。当事業で構築した産学連携専門教育とビジネス日本語・日本ビジネス事情のカリキュラムがありますが、大学としての財産となりました。
 産学連携専門教育については、3つの観点からの教育を実施しました。1つは、ものづくり産業に関する幅広くかつ深い理解を行う「自動車工学概論」、「自動車工学各論」で2つ目はマネジメント感覚の涵養を目的とした「MOT教育」、3つ目は現場感覚に裏付けられた実践能力を育成する「工場長養成塾」と本プログラムを受講することにより、それぞれの専攻分野における高度な専門知識に加えて、自動車産業界で活躍し、将来の幹部となるための知識や経験を積むことができるプログラムを構築することができました。
 ビジネス日本語についてはこれまで国際交流センターにて実施していた、全学対象の「日本語補講コース」との融合を図りました。具体的には中級までの日本語基礎力養成を従来の枠組みにて行い、中級以上を実力強化、資格取得、ビジネス日本語力の習得等、目的別に分け、実践日本語として新しい枠組みで開講することができました。
 2つ目は、企業との連携です。本事業では企業との連携が欠かせずコンソーシアムを形成する43社と1団体に産学連携専門教育の講師の派遣やインターンシップ受け入れ、就職面での協力をいただいております。また、本事業の最終の出口は日本企業への就職となるので企業側のニーズをいかに教育に反映させるかが就職率にもつながってくるため事業当初はプロジェクトを推進するための部会を設置し、産業界のニーズを取り入れることでプログラムのブラッシュアップを行い、より効果的なプログラムを構築することができました。
 3つ目は、海外リクルーティングですが、学術交流協定を結んでいるアジアの大学から学生の推薦をいただいています。現在、本学では海外の63大学と学術交流協定を結んでいますが、この事業を通じて協定校との連携がより強くなったのではないでしょうか。協定校から事業に関する問い合わせもありました。
 国際的に日本の大学の知名度がなかなか上がらない中、このような取り組みを通じて大学の知名度が国際的に向上したことは大きな成果ではないかと考えています。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

自立化後の運営体制は、アジア人財事業運営委員会がプログラム全体の運営の中心となり、就職支援・インターンシップ推進及び企業との窓口については、キャリアサポートオフィスが受け持ち、日本語教育と海外大学との連携については、国際交流センターが受け持つ三位一体体制にて実施しています。
 また、寄附金や奨学金の支援、企業ニーズのプログラムの繁栄を継続的に実施するため、自動車関連企業に加え、幅広い分野の企業を対象とした、「ものづくり産業関連コンソーシアム」を再構成しました。

国立大学法人 名古屋工業大学

図の通り、優秀な学生を選抜し「アジア人財 ものづくりスーパーエンジニア養成プログラム」の継続を実施しています。平成24年度は6名を採用してプログラムを継続しています。
 また、「産学連携専門教育」、「ビジネス日本語教育」の一般学生への開放を行うことにより、より広くアジア人財資構想で得た知見・ノウハウを全学の学生へ提供しています。

【産学連携専門教育】
□ 自動車工学概論(大学院共通科目 2単位)

アジア人財資金構想にて開発した専門教育科目であり、企業と本学の講師により自動車工学に関する要素技術、モノづくりのマネジメント、グローバル化、IT化、産業構造など自動車ビジネス全般を15回の講義にて実施しています。

□ ものづくり工学各論(専門科目 8科目 各2単位)

本学の工学研究科7専攻で開設しているそれぞれの専門科目の中から自動車工学概論で得た知識をさらに深化させることを目的とした各論を履修します。

□ MOT教育(専門科目 4科目 各2単位)

本学の産業戦略工学専攻と社会工学専攻(マネジメント分野)で開設している一連のMOT関連科目の中から、経営的な素養を涵養する上で基本的に重要な科目を指定して履修します。
企業戦略特論、品質管理特論、経営管理特論、生産管理特論

□ 工場長養成塾(ものづくり経営論などの科目に対応する)

中部地域の中堅・中小企業の工場長候補を養成するプログラムであり、実際の製造現場で工程等の問題点を発見させ、問題解決のための改善案ほかの塾生(日本人の社会人)と討議させ改善結果を発表するなどの研修を行います。現在は、日本語補講コースの一部として開講しています。

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】

平成20年度後期から実施している全学対象「日本語補講コース」(国際交流センター実施)との融合を図り日本語新総合コースを設計し実施しています。

■ 非漢字圏出身者の日本語基礎力を向上
□ 中級la, b

初級レベルの文法・語彙を完全に理解し、中級前期レベルの語彙・文法を習得します。

□ 日本語能力試験N3級

問題演習を中心にテストの形式に慣れると共に実践力を養います。N3レベルに必要な文法・読解についての日本語能力の育成を目指します。

□ 中級Ⅱ(読解)

生教材の読解とそこに出てくる重要文型の学習を中心に行います。さらにそれらの文を利用して自分の意見を述べる練習をすることにより総合的な日本語の養成を目指します。

□ 中級Ⅱ(聴解)

日本語学習者が苦手とする日本語音声について発音と聞き取り能力を育成し、発話能力を向上させます。日常会話から専門的な会話まで対応できるよう様々な場面を設定して聴解能力を育成します。

□ 中級Ⅱ(会話)

初級レベルの文法・語彙を使ってスムーズな会話ができるようになること、中級レベルの文法・語彙を覚えて会話の中で使えるようになることを目標とします。

■ 就職に向けた資格取得
□ 日本語能力試験N2級a

日本語能力試験N2合格を目指して問題演習を中心に実践力を養います。主に文法・読解についてN2レベルの日本語能力の育成を行います。

□ 日本語能力試験N2級b

日本語能力試験N2合格を目指して問題演習を中心に実践力を養います。主に語彙・聴解についてN2レベルの日本語能力の育成を行います。

□ 日本語能力試験N1級a

日本語能力試験N1合格を目指して問題演習を中心に実践力を養います。主に文字・語彙・聴解についてN1レベルの日本語能力の育成を行います。

□ 日本語能力試験N1級b

日本語能力試験N1合格を目指して問題演習を中心に実践力を養います。主に文法・読解についてN1レベルの日本語能力の育成を行います。

■ 実践力強化のためのビジネス日本語
□ ビジネス日本語(読解)

ニュースや新聞記事を理解するのに主な語彙・時事用語・表現から、「日本及び世界の今」を知り、自分なりの意見を述べられることを目標としています。

□ ビジネス日本語(会話)

日本語での会話だけでなく、日本のビジネス現場での常識や習慣なども学習します。

□ ビジネス日本語(聴解)

就職後、ビジネス活動を行うための日本語の聴解力を身につけます。

【インターンシップ・就職支援】

インターンシップ、就職支援事業については、専門のコーディネーターがこれまでフォローしていましたが自立化に伴い、キャリアサポートオフィスにて指導教員と連携を取り実施しています。

□ インターンシップ

単位化はしていませんが、夏季休暇中にものづくり産業関連コンソーシアム企業を中心に約10日間のインターンシップを実施しています。

□ 就職支援

就職支援マニュアルを作成し、キャリアサポートオフィスにて実施しています。留学生キャリア教育ガイダンスでは、企業の方から、日本企業や仕事に関する講演を年に2回程度開催したり、日本の企業に関する知識や就職活動で役立つ知識を学ぶ留学生対象就職支援講座の開講、コンソーシアム参加企業から収集した企業ライブラリーの常設や合同企業説明会などによる企業接点の創出などを実施しています。

【奨学金】
□ 名古屋工業大学基金

 大学院入試に合格した私費留学生から選考
 奨学生数:毎年2名まで
 ※大学院授業料については、免除申請が可能

□ 企業奨学金

 名古屋工業大学が海外有力大学との太いパイプを基に、海外から直接学生を選考
 選考時の面接試験には、奨学金出資企業もオブザーバーとして参加
 奨学生数:1名/1企業
 ※大学院授業料については、免除申請が可能

□ 民間奨学金

 奨学金出資企業が名古屋工業大学大学院入学決定者から奨学生を選考
 奨学生数:1名/1企業
 ※大学院授業料については、免除申請が可能

□ 学習奨励費

 日本学生支援機構から毎年1名を推薦
 名古屋工業大学大学院入試に合格した私費留学生から選考
 奨学生数:1名

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・日本企業に就職するための知識・ノウハウが身に付く
・在学中に企業内でものづくりの実践的な教育を受けることができる
・日本企業に就職するためのビジネス日本語能力を習得することができる

□ 企業

・留学生の情報提供
・留学生のリクルート活動に対する情報交換

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【参加方法】
 下記連絡窓口へお問い合わせください。

□ 企業

【対象】
 留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 ①「ものづくり産業関連コンソーシアム企業」への参加
 ②留学生インターンシップの受け入れ
 ③留学生の採用
 ④本事業に関わる寄附及び奨学金への協力
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

国立大学法人 名古屋工業大学 学生生活課 留学生支援室
TEL:052-735-5074

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