アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 学校法人 立教学院 立教大学

■ 5年間の事業の成果

中国をはじめとしたアジア各国における経済が発達し、既に様々な業種において日本企業のアジアへの進出が行われてきました。企業の海外進出は、資本・技術の移動に加え、大量の「人の移動」を伴います。さらに「人の移動」が活発になることは、進出先の各国における交通・宿泊・観光サービス等、多様な業種の活動を一層活発化させることになります。今後、我が国とアジア各国との経済および人の交流をより円滑に進めるには、アジア各国において質の高い「人の移動サービス」を安定的に供給することが重要となります。
 さらに、ビジネスやテクノロジー・文化の交流を目的とした「人の移動」が活発になることによって、アジア各国が有する文化資産の魅力はクローズアップされ、グローバルに広がる契機ともなり、各国では交通や IT のネットワーク等インフラ整備を急速に進めているところです。アジアを含めた世界各国では、観光産業がもたらす経済波及効果の大きさゆえに、観光産業を国の主要産業と位置づけ、海外からの旅行者誘致を産業政策の重要な柱として展開しています。特に中国においては、2008 年に北京オリンピック、2010 年には上海万博が開催されるなど、アジアではグローバルな「人の移動」が活発化し、観光産業における競争がさらに激しさを増しています。もちろん経済状況の悪化等の要因により、観光産業が一時的に変動する可能性はありますが、長期的視点にたつならば、以上のような傾向は明らかです。
 以上に加え、アジア諸国が観光送り出し国としても成長しつつある今後、アジアの市場が発展することにより、ビジネス、テクノロジー、レジャー、文化交流等、将来的に多様な目的での「人の移動」が生じ、アジアではまさに「大交流時代」が訪れることが予測されています。
 アジアにおける市場拡大・インフラ整備・観光誘致が活発化することによって、「人の移動」に関わる業種・企業・人財が著しく不足することは明らかです。また、アジア地域での安心・安全な「人の移動」を確保するためには、ビジネス、観光旅行、文化交流等、多種多様なケースにおいて、信頼のおけるサービスを供給し続けていくことが不可欠であり、そのためには、各国事情に精通した専門職業人を養成することが急務となります。
 このような背景から、本学では『日本文化や生活習慣、商習慣を把握し、卓越した語学力と対人コミュニケーション力および母国ネットワークを最大限活用することで、日本とアジアさらには世界とのメディエーションを牽引することができる観光産業の高度人財』を育成することを目的として、事業を実施してきました。
 5年間の事業の成果としては、ビジネス日本語・日本ビジネス教育を全学的に内製化できたことが大きいと考えています。事業開始前は、留学生のための語学教育において、ビジネス関連科目はありませんでしたが、本事業を通じて企業で働くための実践的な日本語教育のノウハウを蓄積することができ、その結果6つのビジネス日本語科目を本学の全留学生向けに提供することが可能となりました。
 また、海外リクルーティングにおいては、本事業期間中に6か国7校(南京大学、北京外国語大学、韓国外国語大学、マラヤ大学、タマサート大学、モンゴル国立大学、インドネシア大学)と観光学部学部間協定を締結することができ、自立化後もネットワークを通じて交換留学等の人財交流を継続しています。
 最後に産学連携については、これまで教員レベルでの産学の連携はあったのですが、本事業を通じて学部レベルでの産学連携について構築できたことが大きな成果だと考えています。本事業を通じて構築したカリキュラムは、自立化後も寄付講座として実践的な3つのカリキュラムを継続することができました。
 これらの成果を、自立化後についても対象を学部・大学全体に拡大して継続して実施することができました。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

学校法人 立教学院 立教大学

本事業で構築したTEIR教育プログラムは大学への内製化を行うため、「グローバルビジネスコース」を観光学部内に2011年度に新設しました。「グローバルビジネスコース」では、グローバル化するアジアの観光関連業界に興味を持ち、リーダーを目指す学生のための教育を提供します。
 教育プログラムについては、産学連携専門教育・インターンシップは観光学部カリキュラムとして展開し、ビジネス日本語・日本ビジネス教育については、全学的な教育機関として2011年4月に開設された「日本語教育センター」による科目の中にノウハウを組み入れることにより継続して実施しています。

【産学連携専門教育】

産学連携専門教育については、アジア人財資金構想により構築した「観光ビジネス概論」、「旅行産業特論」、「交通産業特論」を継続して企業の寄付講座とし、観光学部に在籍する日本人学生を含めた全留学生向けに開講しています。
 また、観光産業における企画力、マネジメント力を備えた即戦力ビジネスパーソンを育成するために、グループ演習を中心に授業を進める「観光ビジネスプロジェクトA」、「観光ビジネスプロジェクトB」、「ホスピタリティ人的資源論」についても観光学部の正課科目として開講しています。

□ 観光ビジネス概論(前期/2単位)立教観光クラブ寄付講座

日本の観光関連産業の現状や課題・今後の方向性について、現場で活躍するゲストスピーカーの方々から学ぶことを通して観光関連産業の多様性とそこで働くことの意義について理解することを目標としています。
 授業の内容については、講義形式で行います。毎時間、観光関連産業で活躍するゲストスピーカーを招きその現状や課題についての講義を受けたのちに、受講者による質疑やゲストスピーカーとの討論を行います。

□ 旅行産業特論(後期/2単位)株式会社ジェイティービー寄付講座

「旅の無限の可能性に挑戦する」楽しさを理解することを目標としています。
 授業内容については、JTB法人東京での事例を基に最先端の旅の可能性を味わってもらい、旅の仕事の面白さを講義します。その中で、講師が15年間携わってきたエンターテイメント業界との仕事を中心に話していきます。昨今グローバル社会では旅行業界も第三国ビジネスを開始し、日本で培った内容を海外発でビジネスを開始し始めておりグローバルビジネスでも注目を浴びている分野であり、旅行会社として付加価値ビジネスの代表格であるエンターテイメント業界との親和性を業界関係のゲストスピーカーも招請しながらわかりやすく講義します。

□ 交通産業特論(前期/2単位)株式会社ANA総合研究所寄付講座

グローバルな視点から, エアラインビジネスを多面的に分析し,国際航空経営を理解する力を養うことを目標としています。
 授業内容については、日本・米国・欧州の3大航空市場ごとに歴史的な視点や具体的な政策課題でケーススタディを行い、一方で、日本でも今年誕生したLCCやオープンスカイ航空協定、グローバルアライアンスなど時々刻々変化する国際航空産業の最新の動向に関しても分析を行います。

□ 観光ビジネスプロジェクトA(前期/2単位)

観光産業における企画力、マネジメント力を備えた即戦力ビジネスパーソンを育成するために、新規事業プランの立案を通じてビジネス現場で求められる基礎的能力を養成することを目標としています。
 授業の内容については、観光産業に関する新規事業計画の立案を通じてマーケティング・経営戦略の基礎を学習し、1チーム5~6人で編成されるプロジェクトチームでのグループ演習を中心に行います。前期の最後には新規事業構想に関するプレゼンテーションを実施する予定です。

□ 観光ビジネスプロジェクトB(後期/2単位)

本講義は観光ビジネスプロジェクトAとセットで履修する必要があります。本講義では、観光ビジネスプロジェクトAで立案した新規事業構想に基づき、財務会計、投資評価、資金調達計画を策定し,事業計画を完成させます。中間発表会やグループワークを適宜行い、プレゼンテーション能力の育成とプロジェクトの進捗管理を実施します。

□ ホスピタリティ人的資源論(後期/2単位)

「人材=商品」であるホテル業における人材管理、求められる人材像、ホテル業界の概要を理解する。また、就職活動やキャリアアップの方法も伝えることを目標としています。
 授業の内容については、ホテル業界に興味のある学生に①ホテル業界の概要・現状・しくみ・仕事の本質、②ホテルにおける人材マネジメント、③就職活動のノウハウ、求められる人材像、④ホテリエ(ホテルマネジメントのプロ)として活躍する人材になるためのキャリアパス の4つを順に解説します。
 講師からの一方的な講義だけではなく、グループディスカッションやプレゼン、ゲームなどを通し、考え、発言しながら理解を深めます。
 また、ホテルの総支配人、ブライダル業のスペシャリストなどのゲストスピーカーも呼び、ホテルの現場の実際を伝えることで、実践的なノウハウやビジネスに直結した役立つ知識を授けます。

【ビジネス日本語教育】
□ キャリアジャパニーズA(前期・後期/1単位)

日本での就職活動に必要な日本語やビジネスマナー、様々なスキルを学び、それが使えるようになることを目標としています。
 授業の内容については、就職活動に必要な日本語に関連する様々な事柄―「エントリーシートの書き方」「自己PRの仕方」「集団面接の受け方」「個人面接の受け方」などを実践的に学習するとともに、面接に行く際のマナーなどについても学習します。

□ キャリアジャパニーズB(前期・後期/1単位)

日本独特の就職試験(主として国語分野)を突破するために必要な知識とスキルを身につけることを目標としています。
 授業の内容については、就職試験の国語分野、常識分野の試験問題を数多く解き、それについての説明を受けることで、日本の就職試験の傾向を知ると同時に対応スキルを身につけます。

□ ビジネス日本語口頭1(前期/後期1単位)

ビジネスで必要とされる構文レベルの日本語力(聴解・発話)を身につけることを目標としています。
 授業の内容については、ビジネス場面で必要とされる構文レベルの口頭日本語能力―敬語や待遇表現―について、電話応対、依頼、報告、連絡、相談など実際の場面を設定して実践的に学び、それが使えるように練習します。また、プレゼンテーションの仕方についてもスキルアップを目指します。

□ ビジネス日本語口頭2(前期/後期1単位)

ビジネスで必要とされる談話レベルの日本語力(聴解・発話)を身につけることを目標としています。
 授業の内容については、ビジネス場面で必要とされる高度な口頭日本語能力について、実践的に学び、それが使えるように練習します。また、プレゼンテーションの仕方についてもスキルアップを目指します。ビジネス日本語口頭2では、短い構文レベルではなく交渉や苦情処理、営業などを扱います。

□ ビジネス日本語(文書)(前期/後期1単位)

日本でのビジネスに必要な日本語能力(読解・作文)について学び使えるようになることを目標としています。
 授業の内容については、日本で就職したり、日系企業で働いたりする際に必要となるビジネス文書の読解や作成について、具体例を挙げながら実践的に学び、実際にビジネス文書が読め、作成まで練習します。

【日本ビジネス教育】
□ 日本の文化・社会C(前期/1単位)

日本の社会や文化、特にビジネスやサービスに関連したトピックを取り上げ、それらの知識を獲得すると同時に,高度な日本語文型や語彙を増やすことを目標としています。
 授業の内容については、「日本の企業風土」「日本的経営」「日本型サービス」をトピックとして取り上げ、それぞれの専門家をゲストスピーカーとして招き、ゲストスピーカーからの講義を軸として授業をすすめます。
 講義の前には事前学習として、それぞれのトピックについての基本的知識や専門的な語彙や文型を学び、講義の後には,内容理解やディスカッション、レポート作成などを実施することで、自らがそれらを理解するのみでなく、使えるような課題を行います。

【インターンシップ】

企業型インターンシップについては、2010年度より大学のキャリアコンサルタントが担当する正課科目「キャリアデザイン」の中で体系的なキャリア教育の中に位置づける形で内製化しました。このノウハウはアジア人財資金構想のキャリア支援担当教員が、観光学部のインターンシップ科目を担当する形で受け継がれており、受け入れ先はコンソーシアム企業や、校友会組織「立教観光クラブ」の協力を仰ぎつつ開拓しています。

□ 観光インターンシップA(前期/1単位)

必要な基礎知識を得たうえで観光関連事業でのインターンシップ実習を行うことで観光関連の仕事に対する理解を深めること、そしてそのプロセスにおいて観光学部で学ぶ知識との関連性を理解し、学部で学ぶ動機を高めることを目標としています。
 授業の内容としては、事前学習として自らの実習対象となる観光関連事業に対する基礎的な知識を得る。また、事前研修として実習時の目標設定やビジネスマナー等について学び、夏季休暇期間中に各受け入れ先において実習を行います。
 実習先は下記に大別され、授業運営は3人の担当者が適宜分担して行います。なお,(2)に関しては,グローバルビジネスコースの学生(留学生)に対する指導も並行して行います。
(1) 観光調査・地域計画に関連する職種、観光・地域振興を重視する自治体等
(2) 観光関連産業(旅行業,宿泊業,交通業)
授業計画としては、
1回 オリエンテーション
2~6回 事前学習
7・8回 事前研修
8~9月 実習参加(2週間~1カ月程度)

□ 観光インターンシップB(後期/1単位)

夏季休暇期間中に観光関連事業で実習した内容を振り返り観光関連の仕事に対する理解を深めること、そしてそのプロセスにおいて観光学部で学ぶ知識との関連性を理解し、学部で学ぶ動機を高めることを目標としています。
 授業の内容としては、まず、受講者個々人が夏季休暇期間中に各受け入れ先において実習した内容を振り返る事後研修を行います。その後、受講者個々人が成果発表しあうことによって学びの共有を行い、さらにはレポート作成・成果発表の機会を通じて研修内容の事後評価を行います。
授業計画としては、
1・2回 事後研修
3~7回 成果発表と討論
8~12回 レポート作成指導
13回 成果発表会

【就職支援】

就職支援については、産学連携専門教育の寄付講座において、企業人からの実例も交えた講義により業界を深く理解するとともに、インターンシップにて実際の現場を体験することにより自身のキャリアを考えるための授業を展開しています。
 また、観光ビジネスプロジェクトでは、観光産業における企画力、マネジメント力を備えた即戦力ビジネスパーソンを育成するためのグループワークを中心とした講義を行うことにより、就職・就業後に必要な知識・能力を育成しています。
 一方で、就職活動の知識・スキルの養成としてビジネス日本語教育における、キャリアジャパニーズでは「エントリーシートの書き方」「自己PRの仕方」「集団面接の受け方」「個人面接の受け方」「就職試験問題」などを実践的に学習することで就職活動に向けた準備を行っています。
 また、個別のサポートとしては、インターンシップ受講者については、個別にキャリアカウンセリングを実施しています。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・日本企業に就職するための知識・スキルを習得することができる
・講義やインターンシップに参加することにより、社会で働くためのロールモデルをイメージすることができる

□ 企業

・留学生との接点を通じて新たな発想、ビジネスモデルのヒントを得ることが可能
・講座やインターンシップを通じて優秀な人材と接点の創出

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生
□ 産学連携専門教育、インターンシップ

【対象】
 立教大学観光学部に在籍する学生
【参加方法】各科目を履修

□ ビジネス日本語教育、日本ビジネス教育 【対象】立教大学全学部・研究科に在籍する留学生

【参加方法】
 各科目を履修

□ 企業

【対象】
【対象】
 留学生の受け入れに興味のある観光産業企業
【参加方法】
 コンソーシアム企業への参加(寄付講座・講師派遣、インターンシップ受入、採用情報の提供)
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

立教大学 観光学部
TEL:048-741-7421

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