アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 学校法人 東海大学

■ 5年間の事業の成果

地球温暖化対策およびエネルギー・セキュリティー確保の両面から現実的で有効な発電技術として、世界的に原子力発電が再評価され、米国をはじめアジア諸国等(中国、インド、ベトナム、インドネシア、タイ、モンゴル、トルコ、UAE、サウジアラビア等)は、近年、積極的な原子力発電所建設計画を発表し、日本の原子力関連企業は受注獲得に乗り出しています。
 現在では、世界の主流である軽水炉型原子力発電技術を提供できるプラントメーカーはフランスのアレバ社を除けば、東芝・ウェスチングハウス、三菱重工、日立・GEといずれも日本のプラントメーカーです。世界的な原子力ルネッサンスという潮流の中で、今後旺盛な海外の原子力プラント需要に対応するためには、これらの企業にとって、優秀でグローバルな技術系人材の計画的確保が喫緊の課題になっています。
 ところが、国内の原子力分野においては、若年層の理工系離れや長年の原子力産業の低迷等により、学生の職業・研究対象としての原子力離れが進んできました。これを背景とした原子力教育がエネルギーや環境といったより広い分野の一部として扱われるケースが多くなり、原子力専門教育のレベルが一般的に低下しています。
 本プログラムでは、東海大学の建学・教育理念をベースに、日本の40年を越える原子力発電所の建設・運転経験に基づく実務的な教育を図りました。これにより、安全と安心を最優先する倫理観における、グローバルな展開を目指す日本の原子力企業の国内外のプロジェクト、現地日本法人、現地事務所、現地企業の指導、人材教育訓練等の場でリーダー的存在となるアジア原子力人材の育成を目指して事業を実施してきました。
 本事業の成果は3つあると考えています。
 1点目は産学連携専門教育です。これまで、企業の現場担当者が大学内で講義を行うという事例があまりなかったのですが、本事業を通じて多くの企業の現場で働く講師を派遣していただき、留学生も実際に働く技術者からの生の声を聞くことができたことがより講義に対するモチベーション高まり大きな財産となったようです。
 企業側も本事業を通じて今後大学との産学連携について肯定的な企業が多く、企業との関係構築ができたことは大学として大きな財産となりました。
 2点目は、本事業を通じてこれまで協定を結んでいなかった地域や大学との協定を締結することができたことです。具体的には、バンドン工科大学、ガジャマダ大学(インドネシア)、カンボジア工科大学、ユーラシア大学(カザフスタン)の4校であり、事業終了後についても、募集活動が強化され継続して優秀な留学生の派遣をしていただく関係構築ができました。
 3点目は、このプログラムを通じて、インドネシア、マレーシアに本学の同窓会ができました。この同窓会を通じて大使館やこれまでの卒業生が参加するイベントを開催し、両国間が発展するような、他大学も巻き込んだ大きな組織にしたいとのお言葉もいただいております。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

学校法人 東海大学

本事業の自立化後は、2つの仕組みを構築しています。1つは、本事業により開発したビジネス日本語教育について、日本語特別教育に関する日本語教育特別プログラムを独自に完成させ、東海大学国際教育センターにおいて単位化された授業として全留学生を対象に開講しています。
 また、平成22年度後半から原子力開発を目指す海外諸国において、原子力技術者の育成が大きな課題として挙げられており、本学にて、海外技術者を受け入れ、本事業のノウハウ・知見を基に2年間の教育を行うプログラムの構築が25年度4月から開講することとなりました。

【産学連携専門教育】

産学連携専門教育については、平成25年4月から開始する新たなプログラム開講に向け、現在アジア人財資金構想で構築しました下記9科目を改編中です。

・エネルギー情勢及び原子力発電全般

「東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故状況」、「世界のエネルギー情勢及び地球環境問題と原子力発電所」、「放射線利用の輪と原子力発電所」、「原子力エネルギー利用の歴史と教訓」、「軽水型原子力発電の基本構成と炉型」、「軽水型原子力発電所概要(1)BWR型」、「軽水型原子力発電所概要(2)PWR型」、「日本の原子力発電所の現状(建設・運転実績含む)」、「原子力発電所の改良(実績と技術開発)」、「高速炉及び他の原子炉の概要」、「原子燃料サイクルの概要」他

・原子力安全及び安全規制、核不拡散と保障措置、技術者倫理

「原子力発電所の安全確保の基本」、「日本の安全規制の概要」、「核拡散防止と保障措置」、「日本の原子力発電所の安全管理」、「原子力施設の事故と教訓」(福島第一原子力発電所の事故を含む)、「原子力発電に係る不祥事と教訓」、「技術者倫理」他

・放射性廃棄物処理処分

「放射性廃棄物処理処分の概要」、「原子力発電所等から発生する放射性廃棄物と処理」、、「TRU廃棄物の処分/放射性廃棄物処分の安全基準・指針」他

・放射線安全及び管理

「放射線安全の管理の基本」、「原子力発電所の放射線安全」、「放射線従事者の安全管理」、「放射線被ばくの低減」、「環境放射線の管理」他

・原子力発電所設計及び基準、規格

「BWR発電所設計の概要」、「PWR発電所設計の概要」、「BWRプラントの安全評価」、「PWRプラントの安全評価」、「BWR発電所の建設工事・試運転」、「PWR発電所の建設工事・試運転」、「設計指針適合性」、「品質保証活動」他

・原子力発電所の建設・運転・保守

「原子力発電所の立地調査-設置認可までの作業の流れとその概要」、「原子力発電所における工事計画認可・使用前検査(試験及び試運転)」、「原子力発電所における運転管理の概要」、「原子力発電所の運転・保守に係る許認可事項の概要」他

・原子燃料サイクル

「ウランの不思議」、「原子燃料サイクルの意義」、「原子燃料の輸送」、「放射性廃棄物のゼロリリースを目指す原子燃料サイクル」他

・アップストリーム及び燃料成型加工

「加工施設の安全管理」、「原子燃料の輸送」、「原子燃料関連法令」、「MOX燃料の概要他」

・広報及び地域や社会の合意形成

「社会の変化と受容」、「受容への4段はしご」、「合意形成手法と事例」、「立地地域との共生」、原子力広報他

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
・ビジネス日本語B(2単位 90分×14コマ)

本授業では、まず日本の従来の人事制度、現在の人事制度について調査して報告します。また、実際に日本企業に就職している先輩へのインタビューを通して、就職活動のしかたや会社での働き方について学びます。さらに、自分の国と比較するなどして問題点を探り、日本企業で働く上でどのように自分自身のキャリアを組み立てていけばよいかを考えます。

【インターンシップ】

24年度4月より実施しているプログラムのため、インターンシップはプロラグラムとして25年度夏季以降に3ヶ月の長期のインターンシップを実施する予定です。現在構築準備を行っている企業のコンソーシアムにて実施する予定です。

【就職支援】

就職支援については、これまで本事業で蓄積したノウハウ・知見を生かし、留学生のキャリアカウンセリングや、留学生就職ガイダンスを就職支援課において実施しています。
 本年も日本の雇用制度や日本の企業についてなど、日本企業で働くための基礎知識を学ぶための「留学生就職ガイダンス」を本学の全留学生に対して実施しており、多くの留学生が参加しました。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・日本企業に就職するためのビジネス日本語の習得
・日本の商習慣の理解

□ 企業

・ビジネス日本語を習得した留学生との接点を創出
・日本の商習慣を理解した留学生との接点を創出

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【参加方法】
 ビジネス日本語科目を履修

□ 企業

【対象】
 留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 1. 留学生インターンシップの受け入れ
 2. 留学生の採用
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

学校法人 東海大学 国際部国際課
TEL:0463-58-1211(内線2785)

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