アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 東北大学

■ 6年間の事業の成果

IT産業は、我が国では高付加価値型産業創出の代表格として位置づけられて久しい産業です。近年のIT産業界では、国内だけでなく海外市場も含めたグローバル化が急速に発展しており、産学連携等で優れたアプリケーション製品やサービスを創造するIT企業が多く出現している。こうしたIT企業では海外、特にアジア地域を中心とした進出・連携意欲が強くみられており、新興大市場の中国等における海外事業展開、あるいは高いIT普及率を有する韓国等との連携によるソフトウェア製品の研究開発などの事例もすでに多くみられています。
 こうしたIT産業の新たな潮流は、中央の大手IT企業に留まらず、ITベンチャー企業などにおいても活発に見られています。本学の位置する東北地域では、本学をはじめとした産学連携による技術シーズを基にしたネットワークセキュリティなど高付加価値なIT製品、あるいは独自の業務アプリケーション製品などを武器に海外展開に取り組んでいる企業が比較的多く存在しています。また、海外業務と提携した技術優位性のある製品の国内市場での展開などの取り組みも見られます。このような情勢から、IT産業では、海外委託開発のマネジメントなどを担う外国人の期間人材の採用ニーズが高まっているといえます。
 一方、東北地域を含めた地域IT産業のように、高度な技術力を持ちながらも知名度のない中小IT企業にとって、優秀な外国人材を独自で採用し業務で活用することは、現状では困難です。
 加えて、IT産業では慢性的に人材が不足しており、それが大きな課題となっています。 少子化や若年層の理科離れ、新卒学生の首都圏流出による人材獲得の困難さに直面しており、人材確保や定着の観点からの新たな仕組みを模索する必要性に迫られています。ソフトウェア開発の付加価値は人材が全てであり、高まるソフトウェアの品質要求や短納期などに対応できる質の高いIT開発マネジメント人材の 確保は、企業競争力の確保の観点からも大きな課題となっています。したがってIT開発に係る専門人材の確保という観点からも、専門能力を持った留学生の確 保はその打開策として高い可能性を有するといえます。
 本事業では、ハードウェア/ソフトウェアに関する高度なIT技術のみならず、コミュニケーション力、プロジェクトマネジメントやヒューマンスキルに関する基礎素養を併せ持つITスペシャリスト人材の育成を目標として本事業を実施しました。
 6年間の成果としては、大きく3点あると考えています。
 1点目は、実践的な産学連携のPBL教育を留学生向けにも構築ができたことです。これには学内の様々な部局からオープンで留学生(ASIST国費 学生と合わせてこれまで106名が参加)や日本人学生(TAも入れて66名(主に産学連携IT教育))が参加して、留学生の日本社会への定着、日本人学生の国際化やコミュニケーション能力養成にも資する教育活動となっています。また、このプログラムにおける産学連携教育は地域のIT企業によって担われ、訓練を受けた留学生の一部は地域のIT企業へ就職していることから、地域社会との連携強化や振興にも大きな役割を果たしていると考えています。
 2点目は、ビジネス日本語、日本ビジネス教育です。これまでに本学にはなかった、出口を見据えた日本語教育であるビジネス日本語・日本ビジネス教育についての知見・ノウハウを蓄積し、自立化後も講座の設置やe-learningの仕組みを残すことができました。今後は全学の一般留学生にも開放し、多くの学生に本事業の知見・ノウハウを享受して欲しいと考えています。
 3点目は、海外リクルーティングであり、アジア地域の大学とのネットワークを構築することができました。具体的には本事業を通じて、プログラム広報や参加留学生のリクルート活動においてアジア各国の大学の人脈を築くことができました。具体的には、北京郵電大学(中国)、ベトナム国家大学ハノイ校 (ベトナム)、チュラロンコン大学、キングモック工科大学トンブリ校(タイ)、インドネシア大学(インドネシア)の5校と大学間交流協定を締結し、ハルピン工科大学(中国)とは部局間交流協定を締結することができました。このような大学間ネットワークは、東北大学がグローバルな研究教育拠点となる際の基盤となるものであると考えています。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

国立大学法人 東北大学

本事業の自立化後のプログラムは、産学連携専門教育(実践的IT専門教育、産学連携専門講義)およびビジネス日本語講座について、受講者を一般留学生に拡大して実施しています。また、本事業で作成したビジネス日本語、日本ビジネスのe-learning教材も活用しながら、より多くの学生が本プログラムで培った知見・ノウハウを享受できるように運営しています。
 さらに、本事業で培った知見やノウハウのマニュアルを作成し、配布するなど学内教職員に対しても提供しています。

【産学連携専門教育】

・OSS基礎技術/開発プロジェクトによる実践的IT専門教育(インターンシップとしての単位認定:2単位)  アジア人財資金構想事業のPBL(Project Based Learning)で培ったプロジェクト型教育のカリキュラムや運営手法、教育手法等のノウハウ(仙台スキーム)を、さらに仙台地域の電気・情報系主要大学・高専の連携・合同教育の中に留学生も入る形で展開している。現在は、(株)サイバーソリューションズおよび(株)仙台ソフトウェアセンターの協力の下、ネットワークセキュリティにテーマを絞ってPBLを実施している(文部科学省「情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業」の支援を受けている)。
・産学連携専門講義「先端技術の基礎と実践」(2単位)
 この講義ではIT技術(環境、クラウド、情報セキュリティ、自然言語処理)の様々な側面について、(一財)電子情報技術産業協会(JEITA)加盟の企業を中心に12社の企業の最前線の技術者の講師を招聘し、理論的、 あるいは実際的な観点から講義していただきます。これまで学んだ専門知識が企業の現場での問題解決にいかに利用されているか、また、何が必要とされているかを知ることで日頃の学習の意味づけを行います。講義後には講師とのフリートークを行い、技術動向やキャリアなど、日頃、気になっていることをいろいろと聞くことができます。

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
1. ビジネス日本語

(一財)東北多文化アカデミーの協力のもと、本事業の知見を活かし、ビジネス日本語講座A,Bそれぞれ10月~2月の期間に週1回(90分/回)の頻度で全15回開設しています。
 本講座はビジネスで使われる日本語や就職活動に必要な日本語コミュニケーションについて教授する他、日本での就職活動を支援するために、個別のカウンセリングも実施しています。

■ ビジネス日本語A(初中級~上級レベル・毎週火曜日)
 就職活動や入社後に必要となる、基本的な日本語から応用までを学習します。具体的には、漢字・敬語、短時間で日本語の意味をつかむ練習等を行います。

■ビジネス日本語B ※キャリア支援対策講座(中上級~上級レベル・毎週木曜日)
 就職活動に必要な知識・ノウハウの習得を中心に行います。具体的には、自己分析、企業研究、エントリーシート対策、SPI対策、模擬面接などを中心に、就職活動の支援を行います。

2. e-learningシステム

授業の有無にかかわらず、通年で自主学習可能なe-learning教材を、東北大、国際情報(株)、(一財)東北多文化アカデミーが中心となって開発しました。コンテンツの入れ替えが 比較的簡単にできるという特徴を持つプラットフォームの下に「クラス」と呼ばれる4つのコンテンツが開発されました。講義でも、この教材は活用され、 e-learningの素材を刺激としてその時々の参加者に必要な要素(プレゼンテーションの練習や補助教材の読解など)を付け加えて発展させ、日本語 ティーチングアシスタントも含む協働学習によって日本語能力レベル差がある学習者同士の学習を円滑に進める事ができるようにしました。

【就職支援】

就職支援事業は、「ビジネス日本語講座」において、就職活動で必要になる知識やノウハウの提供や相談などを行っています。また、当事業で培った知見・ノウハウを教職員向けに「アジア留学生対応マニュアル」として冊子にし、留学生に対しての対応(リクルーティング、就職支援、インターンシップ)を各担当部局に配布し知見・ノウハウの伝承を行いました。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・日本企業に就職するために必要な実践的な技術知識を身に付けることができる。
・日本企業に就職するために必要な日本語能力の習得をすることができる。
・日本企業に就職するための準備や知識・ノウハウを習得することができる。

□ 企業

・高い日本語運用能力を持つ優秀な留学生との接点の創出
・実践的なIT知識・スキルを持つ留学生との接点を創出

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【参加方法】
 「先端技術の基礎と実践」は科目履修
 ※PBL科目、ビジネス日本語講座は下記連絡先に問合せ下さい。

□ 企業

【対象】
 留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 1. 留学生インターンシップの受け入れ
 2. 留学生の採用
 3. 留学生の奨学金への協力
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

国立大学法人 東北大学 大学院情報科学研究科 産学連携グローバル人材育成センター
担当:センター長 中尾光之

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