アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 千葉大学

■ 5年間の事業の成果

現在アジア諸国には、日本・日系企業がアジアの安い人件費を頼りに生産拠点として多数進出しています。その一方で、日本製品を購入してくれる国としても、アジア諸国は重要なビジネスのパートナーでした。しかし、近年このような関係は少しずつ変化が出始めています。ひとつには、韓国、台湾による安価でかつ品質の良い製品の供給です。これにより、日本の製品は高級な製品としての位置づけにならざるを得なくなりました。
 また、アジアの各国の中で特に中国などは、急激な経済成長をとげ、今までよりも高級・高付加価値である製品を要求するようになりました。つまり、人々の基本的な生活が豊かになり、今までのように供給されたものをただ購入する消費者から、自分たちの生活に必要な価値の高い製品を選び購入するという態度に変わってきました。
 この「生活に必要な価値の高い製品」とは、デザインが大きく関与する問題であり、日本企業の製品は、今までの安価な製品の市場から高付加価値の市場での戦いとなっています。日本の企業も、アジアの生活に対応すべく、アジア諸国の生活や現在の状況をよく理解し、その中から問題を発見し的確な製品を提案することが不可欠となっています。そして、このように緻密に市場に対応するには、日本人だけではなく、アジアの人材が必要であり、デザイン部門をはじめとする製品開発に関連する部署では優秀な留学生を採用するようになりました。
 本プログラムでは、このような日本の製造業が、さらにアジアで躍進するために必要な、製品開発が出来る優秀な人材を輩出することを目的としています。
 当事業のもっとも大きな成果は優秀な留学生を海外からリクルーティングする体制を構築し定着させることができたことであると考えています。
 当事業により、アジア地域のデザイン系の有力大学との協力関係(大学間交流協定・部局間交流協定)を構築することができました。中国では清華大学、上海交通大学、浙江大学、北京理工大学の4校、韓国では、ソウル大学、KAIST、延世大学の3校、タイではチュラーロンコーン大学、マヒドン大学の2校、マレーシアではサラワク大学、シンガポールでは南洋理工大学、インドネシアではバンドン工科大学の計12校を事業期間中に大学間・部局間交流協定を締結し今後も拡大していく予定です。
 また、リクルーティングにおいて最も効果的だったのが、各有力校での模擬授業の実施です。当事業開始前より講義形式の実施はしていたのですが、当事業をきっかけに本学日本人学生を同行して1週間程度のワークショップ形式を開催し、また開催校の拡大も行ってきました。実施校については、清華大学、上海交通大学、浙江大学、湖南大学、ソウル大学、チュラーロンコーン大学、南洋理工大学、インド工科大学です。この模擬授業の一番の目的は、実際の授業を体験することで教育レベルや内容を理解してもらうことにより日本で勉強したいと思うファンを作ることであり、この試みは効果的に作用しました。これにより千葉大学の名前も浸透し、私費で千葉大学に留学したいという学生も出てきました。
 さらに、同行した日本人学生の国際化という面においても影響が大きく、日本の学生は英語でのコミュニケーションが得意ではありませんが、ワークショップが終わる頃には現地の学生と親密になるほどコミュニケーションスキルが向上する効果も見られました。
 これらの海外大学への広報の受け皿として、本学の国際化推進と連携して平成19年度よりアジア地区でのIEC(International Exchange Center )オフィスの設置を実施してきました。北京、上海、浙江、バンコク、インドネシアの3カ国5拠点の設置はすでに完了しており、今後はソウル・光州・釜山、ベトナム、シンガポールにも設置する予定です。
 これらの海外から優秀な学生を獲得する体制の構築だけではなく、受け入れ体制の整備も実施しています。
 海外から優秀な学生を確保する際に障壁となるのが日本語能力です。多くの留学志望者は、日本で学びたいのではなく海外で学びたいと考えていることが多いため、学生に選考段階から日本語能力を求めるのは得策ではありません。
 そこで本学のリクルーティングには特長として、選考段階では留学生の日本語能力を問わないとアナウンスし、英語とデザインでのコミュニケーション力を受け入れの条件にしています。デザインという領域はそれをひとつの言語として扱うことができるため、それはある意味我々のアドバンテージでもあります。この条件であれば、日本語能力というハードルをなくすことができるため、欧米の大学と同様に優秀な留学生をリクルーティングできます。
 そのために、学内に英語による授業を増加させることで入学直後から英語で受講できるカリキュラムを構築してきました。最終的には博士前期課程の授業の70%を英語化し、グローバル化に対応する予定です。
 当プログラムは最終的に日本企業・日系企業への就職することが目標となるため、卒業までに企業で通用する日本語能力を身につける必要があり、特に産学連携専門教育において、日本人学生も含めたPBL形式での授業においては日本企業で通用する実践的な日本語能力を身につけることができました。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

国立大学法人 千葉大学

自立化は2つの手法により実施しています。1つは、優秀な学生を選抜しこれまでの「グローバルアジア・デザインスクール」から「Master of Design Education」に名称を改めプログラムも多彩化し、2週間から2年間の5つのプログラム(2week SS Program、2month Research Program、Exchange Program 6 month、Double Degree Program 1 year、Master Program 2 year)を展開していきます。2年間のプログラムでは、平成24年度は4名を採用しプログラムを継続しています。
 2つ目は、「産学連携専門教育」、「インターンシップ」の一般学生への開放を行うことにより、より広くアジア人財資金構想で得た知見・ノウハウを全学の学生へ提供しています。  また、当事業の自立化の枠を超えて本学全体で海外の協力提携大学からIECオフィスを通じて優秀な人材のリクルーティングおよび多様なプログラムでの受け入れを実施しています。

【海外リクルーティング】

海外リクルーティングについては主に海外強力提携校である中国の浙江大学、シンガポールの南洋理工大学の2校からIECオフィスを通じて実施しています。今後はソウル大学、バンドン工科大学、チュラーロンコーン大学にもIECオフィスを設置予定のため上記の海外強力提携校5校からのリクルーティングを中心に行っていく予定です。  また、一方で本学が実施している短期留学(2week SS Program、2month Research Program、Exchange Program 6 month)を利用し一度留学した学生が母国大学卒業後に改めて進学しプログラムに参加するケースなども出始めています。  さらに、模擬授業についても先述した海外強力提携校にて継続して実施して行く予定があり、日本留学希望者の掘り起こしを行っていきます。  これら海外リクルーティングは本事業に限定せず全学で大学間交流協定校、部局間交流協定校よりIECオフィスを通じて実施しています。

【産学連携専門教育】
□ デザインインタラクティブ 1.2.3(各2単位)

この授業は、各学生の研究に即した知識の獲得を、様々なデザインの分野の教員が指導するものです。この授業では、学生個人に合わせてカリキュラムが組まれるため、学生には、専用のカリキュラムを常勤講師と非常勤講師とで供給します。学生・常勤講師・非常勤講師のインタラクト(協業)を目指した授業(授業科目の由来)であり、きめ細かい指導を行います。

□ プロフェッショナルセミナー

プロフェッショナルセミナーは、日本のデザインに関連する企業、デザイン関連団体(日本には8 つの団体があります) や著名なフリーランスのデザイナーなど、様々な講師を招聘し講義を行います。文字通り、さまざまな分野の専門家であり、オムニバス的な授業ではなく、ある目的に沿って授業を行います。
 事業期間中は日本産業デザイン振興会が「プロフェッショナルセミナー」という名称で実施していましたが現在は、学内で「デザイン・プランニング論」、「サービス・デザイン論」、「デザイン・エンジニアリング論」という名称で内製化して実施しています。

□ インターナショナルデザインワーク

本演習は、インターナショナルリエゾンセンターのメリットを最大限に生かして、海外の提携大学の教員を招聘し演習を行うものです。日本にはない世界の各国が考えるデザイン教育を体験できるとともに、世界の先端のカリキュラムを習得できるカリキュラムです。提携校として、デルフト工科大学(オランダ),IIT,プラットインスティテュート(米国) などが挙げられます。
 事業期間中は日本産業デザイン振興会が「インターナショナルデザインワーク」という名称で実施していましたが現在は、学内で「デザイン・プランニング論」、「サービス・デザイン論」、「デザイン・エンジニアリング論」という名称で内製化して実施しています。

□ 異なるデザイン周辺領域習得プログラム(通期集中 2単位)

他専攻のデザイン系の授業を受講し、かつ事前指導、事後指導を受講します。デザインに関する多様な授業を受講し、デザインに関する様々な知識を獲得します。

□ デザイン・プロジェクト PBL-Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ.Ⅳ(通期集中 2単位)

大学における研究成果を外部提携先との連携により実践し、実践的な能力に関する知識を習得することを目標としており、企業からの課題のもとに製品開発やサービスの開発を行うものであり、グループワーク主体の授業となります。これらに参加することで、プロジェクトマネジメントやリーダーシップデベロップメントが行えるようになります。

□ 海外大学アライアンス・プログラム Ⅰ.Ⅱ(通期集中 2単位)

海外アライアンス・プログラムは、海外の提携校とジョイントのワークショップ(同様に製品開発のワークショップ)を行うものです。

【インターンシップ】

平成20年度から実施している、学内に企業を招聘してのインターンシップ(インユニバーシティ・インターンシップ)を単位化し、実施しています。
 企業から講師を派遣していただき、各企業において課題を出していただくことで実践的なプロジェクト型のインターンシップを実施しています。この取り組みは、経費を伴わないプログラムとして自立化後も定着させることができました。

□ デザイン・インターンシップ・プログラム (通期集中2単位 最大4単位まで取得可能)

企業のデザイン部門における実務経験を通じて、実践的なデザイン業務を習得することを目的とし、企業におけるデザインの立場を学び、企業の立場からのデザインとユーザーの立場からのデザインの両者の視点を習得します。実施期間は、基本2週間以上で実施しています。

【就職支援】

就職については、1つのルートを確保できつつあります。そのルートとは、本事業に協力している企業からの非常勤講師や特別講師が仲介的な役割を担い、授業やインターンシッププログラムで非常に優秀な成績を収めた学生がその後企業からオファーをもらい就職が決まることです。
 本事業の特色で企業が教育に密接に携わり、実践的な教育を行うことにより企業と留学生の接点が多く創出されることから、在学中に相互理解を深めることによりミスマッチをなくすことができ、双方にとってwin-winの関係となります。
 また、このルート以外にも企業とのプロジェクトワーク中心の教育を実施しているため、自然と就職活動に必要な知識やスキルが身に付くという効果も見られます。

【奨学金】

奨学金については、本学が独自に運営している2つの奨学金から当事業の枠を確保しました。

□ エクセレント・インターナショナルスチューデント・スカラシップ

 奨学生数:2名 給付額:月額10万円/名
 給付期間:2年間
 ※入学料・授業料についても全額免除

□ パートナーシップ・プログラム

奨学生:2名 入学料・授業料の免除 減免期間:2年間

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・日本企業に就職するための日本企業との接点を創出
・企業で働くための実践的な教育を受けることができる
・英語によるプログラムも用意されている

□ 企業

・将来の採用に向けた人材交流
・日本企業の海外進出、現地でのリクルーティング等のネットワーク形成支援

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【対象】
 千葉大学へ入学意思がある留学生
【参加方法】
 下記連絡窓口へお問い合わせください。

□ 企業

【対象】
 留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 ①大学でのデザイン共同研究
 ②学内インターンシップへの参加
 ③奨学金への協力
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

国立大学法人 千葉大学
TEL:043-290-3098

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