アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学

■ 5年間の事業の成果

産業界における企業の課題等として、IT分野の中でも、各種の機械や機器に組み込まれ、その制御を行う「組込みソフトウェア」は、情報家電機器、携帯電話、自動車、産業機械・機器など電子制御機器の高機能化・高性能化により、大規模化、複雑化が顕著に進み、多くの産業の中核技術として今後ますます重要となっています。同時に限られたハードウェアの制約の下での開発が要求される「組込みソフトウェア」は、高度で専門的な技術が必要です。また、ソフトウェアの開発規模が拡大する一方で高度で専門的な技術が必要となります。また、ソフトウェアの開発規模が拡大する一方で、開発期間を短縮する傾向が近年顕著であり、以前にも増して高い生産性が要求される状況に置かれています。
 各種製品・機器の品質及び機能を決めるもっとも重要な要素であり、国際的にも競争力を有する分野の「組込みソフトウェア」は、日本の産業力強化のカギを握る分野となっています。
 本プログラムは、基盤人材育成プログラムと高信頼組込みシステム人材育成プログラムという、産学連携による実践的な教育プログラムによって、①システム要求分析・設計等の組込みソフトウェアの基礎知識・スキルを持つ人材、②緊密なチームプレイのもと信頼性のあるソフトウェアを開発できる人材、③実践的な知識・資質を持った専門技術者を育成し、北陸地域の企業へ輩出していくものです。組込みソフトの研究開発基盤と人材育成に強みを持ち、大学院教育革新に対する先導的な役割を担う北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)と、機械産業・IT産業が強く、ニッチトップ・オンリーワン企業が多い北陸地域の関連企業との連携によりプログラムを実施してきました。
 5年間の事業の成果としては、4つあります。
 1つ目は、優秀な学生の獲得であり、中国(北京大学、清華大学、天津大学他)、タイ(チュラロンコン大学)、ベトナム(ベトナム国家大学他)、韓国トップレベルの大学より、トップレベルの人材を獲得することができました。そのために、大学内の体制を整備し、チュラロンコン大学、ベトナム国家大学には学生獲得の協力者を配置し、海外大学との人的交流ネットワーク強化するとともに、本学の情報科学研究科に、中国、タイ、ベトナム担当の学生獲得を任務とする教員を配置することを行いました。
 2つ目は、高信頼組込みシステム技術者育成に係る教育システムを構築できたことです。産学連携専門教育では、PBL演習科目として、ソフトウェア開発の流れを実体験する演習「高信頼ソフトウェア開発演習」と体験したソフトウェア開発の流れをソフトウェアプロセスとして整備しそれを基に品質作り込みの実体験をさせる演習「高信頼ソフトウェア開発プロセス設計」2科目を開発し実施しました。PBLの教材は、北陸地域の業種をソフト開発提供型、家電機器開発型、情報機器開発型、OA機器開発型、機械開発型の5つに分類し、参加企業の協力を得て開発しました。
 また、これまで本学では留学生の日本語教育について、単位化をしていませんでしたが、本プログラムを通じて日本語教育科目の開発・整備を行い、平成24年度からは初級からビジネスレベルまでの12科目を正規科目として単位化し留学生教育に活用しています。
 3つ目は、北陸地域企業との連携であり、2009年10月に「高信頼システム情報交換会・北陸」を立ち上げICT関連の最新情報の共有化を図る活動を実施し、自立化後も継続して行うことにより産学双方にとって有益な情報交換の連携を持続しています。
 4つ目は、北陸地域への人材の輩出です。本プログラムの受講生の内、3期生までの約9割が日本企業に就職することができたのですが、そのうち9割の学生が北陸地域の参加企業へ就職できたことです。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学

自立化については、これまでのプログラムにクローズした科目としてではなく、開発したカリキュラムと本事業にて蓄積した知見やノウハウを学内全体の留学生にオープンにすることにより実施しています。
 また、以前に比べ、就職支援(キャリアオフィス)と教学(アカデミックオフィス)の一体的運営が重要視されるようになり、以下に示す、就職と教学が相乗的に高めあう科目やプログラムの設置に取り組んでいます。

【産学連携専門教育】

PBL(Project Based Learning)演習を通して、実際的な問題を通じて得られた知識や技術を活用する力を養成するとともに、「チームプレイ」や「コミュニケーション力」の養成を図ります。
 演習ではプロジェクト参加企業のご協力を得て提供された各企業の製品開発上の課題を扱います。
 企業における製品開発上の課題やポイントを学び、技術能力を備えコミュニケーション能力に優れた人材の育成を図ります。
 また、各講義最終日には企業関係者の前で研究成果をプレゼンテーションし、講評を受けることで、企業と大学の双方の観点からの指導を通じた教育的効果が期待できます。

□ 高信頼ソフトウェア開発演習(選択科目2単位)

組込みシステム固有の特性や機能要求・非機能要求の実現方法などを習得することを目的とし、実際のシステム開発の現場で用いられている例題(情報機器、家電機器など)を使用し、実際に開発を行うことで、信頼性を実現するための問題点などを理解します。
〈開発PBLの種類と課題概要〉
・ソフト開発提供型業種課題(プリンタ制御BOX)
 操作対象が多い、状態遷移が複雑、テスト自動化が必要などの特徴があります。
・家電機器開発型業種課題(自動ガスコンロ)
タイミング要件が多い、高い安全性要求、テスト自動化が必要などの特徴があります。
・情報機器開発型業種課題(データ計測収集システム)
 入力が不定期、ネットワークを通じた通信が必要などの特徴があります。
・OA機器開発型業種課題(スキャナ)
 グラフィカルユーザーインターフェイスの設計、CPU利用の最適化などの特徴があります。
・機械開発型業種課題(製品検査システム)
 不良品の検出、コンベア制御などの特徴があります。

□ 高信頼ソフトウェア開発プロセス設計(選択科目2単位)

開発演習で実施した手順をソフトウェアプロセスとして整理し、品質特性をソフトウェアプロセスに反映する手法を習得することを目的とし、標準プロセス、テスト技術、モデル検査技術、製品ごとの問題特性分析、プロセス適用方法、高信頼性要件(テスト、フェイルセーフ、検証等)のプロセスへの作り込み、プロセスの評価を実習により習得します。

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
□ 日本語入門1.2.3(非正規科目)

日本語の初心者を対象として、ひらがな、カタカナの習得、基本的な会話、聞き取り、作文のスキルの訓練を通して、日本語スキル習得の基盤を育成すると同時に日本語学習意欲を向上させることを目的としています。

□ 日本語初級1.2.3(各2単位)

基本漢字と初級レベルの基本的な語彙、文型、文法、表現の運用訓練によって、まとまった量での簡単で日常的な会話や、くだけた表現の使用と簡単で短い文章の読解や作文ができるスキルを習得することを目的としています。

□ 日本語中級1.2(各2単位)

中級レベルに必要な漢字とコミュニケーションに必要な機能表現の運用訓練によって、人間関係や場面に合った自然な会話、書き言葉による身近な題材の文章の内容理解と積極的に発言できるスキルを習得することを目的としています。

□ 日本語上級1.2(各2単位)

上級レベルに必要な漢字と論文やレポートの読解と作成、学術的なディスカッションや発表に必要な知識とスキルの運用訓練により、学究生活に必要な日本語スキルを習得することを目的としています。

□ ビジネス日本語1(2単位)

中級レベルを修了した者で、日本での就職を希望する者を対象とし、日本企業の特徴や日本のビジネス社会の大まかな構造がわかり、日常場面での表現と日本のビジネス場面における表現の違いとその背景を理解します。また、日本社会における基本的なビジネスマナーを身につけることを目的としています。
 講義の内容としては、ビジネスにおける自己紹介・他者紹介、退社時・来訪時の応対、電話を掛ける・受ける、ビジネスレターの作成、会議で意見を述べる、会議の取りまとめ報告書の作成、ビジネスEメールの作成などを主に講義形式で行い、随時グループワークを取り入れ実施しています。

□ ビジネス日本語2(2単位)

日常的な報道メディアの日本語が共時的に理解できること、ビジネス会話をほぼ理解し、ビジネス文書から情報を理解できること、自分の考えを正確に話せること、相手の話を正確に聞きとり質問できること、誤解のない発音を習得すること、および、ビジネス文書を理解し作成することを目的としています。  講義の内容としては、敬語表現・婉曲表現・内と外、ビジネスマナー、メモの取り方、情報の理解と説明、新聞記事から情報を読み取る、ビジネス文書の読解・作成、ディスカッション技法、グループワークなどを主に講義形式で行い、随時グループワークを取り入れ実施しています。

□ 企業日本語実習(2単位)

ビジネス日本語学習の最終段階として、日本企業への就職を希望する外国人学生を対象に、企業訪問を通してビジネスや職場における実際的な日本語の使用と企業の実態を学び取る事を目的としています。本学と結びつきの強い企業の協力を得て、2回の企業訪問と企業関連の学習事項の整理のためのクラスを基軸として構成されます。実用の日本語使用能力の向上にとどまらず、日本の企業の仕組みや内外の環境を日本語で学ぶことによって、外国人留学生の卒業後の日本企業への就職の有効なサポートをします。

□ 日本事情(2単位)

日本に関する人間関係から、文化、歴史、政治に至る広範囲で正確な知識と情報を得ることにより日本理解の知的な基盤を作ることを目的としています。外国人学生にとっては日本をよりよく理解するための、日本人学生にとっては将来の国際活動の準備としての講義となっています。単なる情報提供のクラスとなることを避けるために、最初に、社会、文化、制度を理解するための理論的枠組みを紹介し、知的な文脈の中で情報や知識をまとめ上げます。

□ 異文化コミュニケーション(2単位)

異文化間コミュニケーションは机上の空論では意味がありません。現役会議(同時)通訳者でもある客員教授が教授する、グローバル・ビジネス現場での実践を目的とする学際的な授業でワークショップ方式にて実施しています。授業内容としては、プレゼンテーションやディスカッション、異文化間ビジネス交渉のシミュレーションを通じて、グローバル・ビジネス現場での最も効果的な実践方法を習得します。国際会議の同時通訳者から、最新情報と現場の生の体験を学習することができます。

【就職支援】

就職支援については、留学生向けに実施している事業としては、ガイダンスを実施しています。また、アジア人財資金構想で得た留学生への就職支援に関する知見を利用し、留学生にも応対ができる個別のカウンセリングのサポートも実施しています。また、「ビジネス日本語教育」では、就職活動で使用するビジネスマナーや待遇表現、ビジネス文書の読み書きなども実施しています。
 留学生向け就職対策セミナー(年1回)
 他の国々とは異なる日本特有の就職活動の方法、日本企業が求めるもの等、外国人留学生が日本で就職活動を行う上で注意すべき重要な事項の説明を行います。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・日本企業に就職後に役立つ実践的な専門知識・スキルが身に付く
・日本企業に就職するためのビジネス日本語能力を習得することができる

□ 企業

・ICT関連の最新情報の収集や意見交換が可能
・専門知識・スキルを持つ優秀な留学生との接点を持つことができる

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【対象】
 日本企業に就職の意思がある本学留学生
【参加方法】
 1. 産学連携専門教育科目、日本語科目については科目履修
 ※産学連携専門教育科目については、情報科学研究科高信頼組込みシステムコース受講生のみ
 2. 就職支援については、キャリア支援課へ要問い合わせが必要

□ 企業

【対象】
 留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 1. 留学生インターンシップの受け入れ
 2. 個別企業セミナーの参加
 3. 求人情報の提供
 4. 情報交換会「高信頼システム情報交換会・北陸」(年6回)への参加
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 キャリア支援課
TEL:0761-51-1969

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