アジア人材資金構想

高度専門留学生育成事業 国立大学法人 群馬大学

■ 6年間の事業の成果

群馬県内の産業の特徴は、製造業の割合が全国平均と比べて非常に高く、いわゆる「ものづくり」産業が盛んです。大手の家電・自動車メーカーに関わる加工組立型産業などの製造業が集積しており、特に、製造品出荷額をみると、自動車関連産業を中心とした「輸送機器」の割合が30%以上を占め、最も高い比率となっています。
 また、製造業に関わる事業所は5,509社あり、そのうち中小企業は5,421社と、約98%を占めています。群馬県には、長い年月を通じて蓄積され、継承と発展がなされてきた高度な技術の集積がありますが、近年は、大手企業との取引を中心とした産業構造が大きく変化する中、国際的な競争などにより厳しい環境に置かれています。企業によっては、既存の取引形態を継続するために、中国を中心としたアジア圏に、生産の拠点を設ける例も見られます。
 本事業の目指す「ものづくり人材の育成」の産業分野は、特に国際競争が激しく、コンソーシアム企業でも、製品の開発研究、生産管理等のため優秀な人材の確保・育成がビジネスの成功を大きく左右すると言われています。また、グローバル化の波が押し寄せており、優秀な人材育成は企業の生き残りを賭けた喫緊の重要課題です。特に、海外展開を持続させるためには、日本と現地の懸け橋となる海外人材の育成確保が必要不可欠であり、将来日本人に代わって現地の幹部となる要因の育成が課題となっています。  以上の背景から本事業では、工学系の高い技術知識と企業への忠誠心を持ち、日本の文化、ビジネス風習に通じ、日本語に堪能であり、経営能力、生産現場等のプロジェクト運営能力、現地政府・現地法人と日本本社との調整能力を、リーダーとして発揮できる人材を育成して来ました。
 本事業の成果としては、3点あると考えております。
 1点目は、本事業を通じて産学連携に係る学内の取り組み・体制を変えることができたという点があります。
 本校は、地元中小企業との産学連携においては、密接に行ってきましたが、研究を主目的にした連携が多かったため、大学側の窓口は一部の教員との連携が多く、事務職員が産業界と接する機会はほとんどなく本当の意味での大学と企業の組織的な連携は行えていませんでした。
 本事業では、留学生のリクルーティングから始まり、在学期間中の教育、インターンシップ、就職支援といった幅広い事業範囲、また、最終的なミッションが日本企業への就職という事業の特性から、様々な部分で企業との接点が多く、産業界の意向を踏まえた教育カリキュラムの作成やリクルーティングで必要となる求める人材像など、これまでの大学教育でなかった観点での企業との連携を行うことができました。本事業を通じて大学として、学内の事務職員、教育担当者を含めての産業界とのつながりを深化することができたことが大きな成果だと考えております。産業界のニーズは刻々と変わり続けていきます。今後も、本事業で構築した産学連携の情報交換を密にして、常に産業界から求められる人材像の把握、教育の在り方について柔軟に対応していくことが必要だと考えております。
 2点目は、海外大学との協定校が大幅に増えてきたことです。優秀な留学生をリクルーティングするためには、海外大学との連携が必須であり、本事業を通じて海外大学との強固な関係構築を行うことができました。本事業が開始した平成19年から大学の国際化の流れが高まってきたことも要因に挙げられますが、平成19年7月は海外大学との協定校は39校でしたが、平成24年9月には2倍以上の86校と大幅に協定が増加しました。
 3点目は、ビジネス日本語教育について、本事業を通じて得た知見・ノウハウを学内に吸収できたことです。これまで、留学生の就職を見据えた日本語教育は行われていませんでしたが、本事業を通じて留学生のキャリアの選択肢として日本企業への就職が注目され、これまで大学で行っていた日本語教育のワンランク上の教育の必要性が出てきました。  本事業で体系的にビジネス日本語教育を学内に根付かせたことは、大学として非常に重要な財産となりました。
 また、出口の支援を行うことで、本校から日本企業へ就職する留学生が増え、ロールモデルを輩出することで、海外大学から優秀な留学生をリクルーティングする際に非常に優位に働き、出口から入口へと好循環を生み出したことも大きな成果と言えます。

■ 自立化後のコンソーシアムの取組内容

国立大学法人 群馬大

本事業の自立化後は、事業期間中に実施していた、産学連携専門教育、ビジネス日本語教育、日本ビジネス教育、就職支援事業を継続して実施し、全学の留学生が受講できるよう講座を解放しています。

【産学連携専門教育】
・日本ビジネス(9月~10月 短期集中講座)

本事業で産学連携専門教育科目として実施していた「生産と管理」と「日本ビジネス」を融合させた科目で、日本企業で働くために必要な、企業倫理、法令遵守、知的財産、製品開発戦略、日本企業の風土、営業活動の心得、企業の広報について、企業派遣講師による講演(90分×12コマ)と工場見学(180分×2コマ)を約10日間の集中型授業で実施しています。
講義の内容は、1.問題解決能力講座①、2.問題解決能力講座②、3.問題解決能力講座③、4.社員教育5.企業倫理・法令遵守、6.知的財産、7.環境に優しい企業活動、8.製品開発戦略、9.品質・生産管理、10.工場見学①、11.工場見学②、12.日本企業の風土、13.営業活動の心得、14.企業の広報となっています。

【ビジネス日本語・日本ビジネス教育】
・ビジネス日本語会話入門(前期 水曜日 16:00~17:30)90分×15コマ

このクラスは、ビジネスの電話応対マナー・語彙・フレーズの基礎、仕事上の人間関係における対面会話の表現を学び、スムーズに使えるようになることを目的としています。
 授業は、例えば、対面会話については、初ミーティングで自己紹介をする、上司に仕事が締切りに遅れたことを謝る、上司からアドバイスを受けた時の反応等、毎回シチュエーションを決めてマナー、語彙などの知識と会話表現について学習します。

・実践ロジカルライティング入門(前期 火曜日 12:40~14:10)90分×15コマ

このクラスは、ロジカルシンキング(論理的思考法)の手法を使って、書くための項目を論理的に整理する能力、読み手を納得させる報告書や企画書を作成する能力、読み手にストレスを与えない依頼や問い合わせのEメールを書く能力を育成することを目的としています。
 授業は、文章のわかりやすさについて考え、あらゆるシチュエーションでのメールの作成、報告書や提案書の作成を通じて、実践的な文書作成能力を習得します。

・ビジネス聴解・読解入門(後期 火曜日 14:20~14:10)90分×10コマ

このクラスではBJTの聴解・聴読解対策を中心に、様々な場面における日本人の生の発話をききとることができるようになること、ビジネス文書やビジネス書などを読む速読力の育成、そのための社会的基礎力の向上を目標としています。
 授業は、BJTの問題や新聞を使用してテスト対策を中心に実施しています。

・実践パブリックスピーキング入門(後期 水曜日 12:40~14:10)90分×10コマ

このクラスは、複数の人の前で話す場合に、場面や内容にあった話し方が選択できるようになるとともに、自分の話し方の特徴を理解し、欠点が目立たない話し方ができるようになることを目的としています。
 授業は、プレゼンテーションとグループディスカッションを中心に進めていきます。

【就職支援】
・ビジネス日本事情入門(後期 木曜日 17:40~19:10)90分×6コマ

この講座では、就職活動の流れと就職状況、自己分析、業界研究・企業研究、エントリーシート、Eメールと電話のマナー、筆記試験対策についての基礎知識の学習を行います。

・内定者による就職活動報告会

日本企業において内定を獲得した留学生にスピーカーを依頼し、どのようにして内定を獲得したか、どんな準備が必要になるのかなどについて体験談を語ってもらいます。

・面接対策講座(2月実施予定)

模擬面接を中心とした講座を2月に開講する予定です。

■ 留学生、大学、企業が参加するメリット

□ 留学生

・就職活動及び就業後に必要なビジネスシーンで通用するビジネス日本語を習得することができる
・日本企業の仕事の仕方、慣習など企業理解が深まる
・日本企業に就職するための準備や知識・ノウハウを習得することができる

□ 企業

・優秀な留学生との接点の創出
・日本企業の文化を理解しビジネス日本語能力を習得した留学生との接点を創出

■ 留学生、大学、企業の参加方法

□ 留学生

【参加方法】
 希望する各講座を受講することが可能
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

□ 企業

【対象】
対象:留学生のインターンシップ受入や採用意向をもつ企業
【参加方法】
 1. 留学生インターンシップの受け入れ
 2. 留学生の採用
 3. 海外現地法人の外国籍社員の受け入れ
 ※詳細は下記の連絡窓口へ問い合わせください。

■ 連絡先

国立大学法人 群馬大学 研究推進部 国際交流課
TEL:027-220-7625

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