取り組み事例紹介

国立大学法人 大阪大学

■ インターンシップ

戦略的なインターンシップにより企業の即戦力人材を輩出

Q. 貴校のインターンシップ事業の概要を教えてください。

当校のインターンシップの特徴は、約1ヶ月間という長期間で実施していることと、2回のインターンシップを実施している点にあります。
 実施時期は、1回目は通常のインターンシップの時期(1年夏期)では日本語能力にまだ問題があることから1年次の2月~3月に4週間、2回目を2年次の8月~9月に4週間実施しています。
 1回目は学生に就職を意識させるための職場体験、2回目は実務能力やグループ作業を中心とするインターンシップとなるように各企業にお願いしています。また、学生は可能な限り会社の寮に4週間滞在し、企業の各事業所の現場に近いところへの配置をお願いしています。企業では社会人基礎力の教育にも配慮し、実際に就職を見据えて1ヶ月間学生の能力や適正を見ていただいています。
 特に、2回目は、それぞれ内定企業先にて、実際に業務を役割分担しながら進めていくグループ作業を学習する内容のインターンシップを実施しています。これまでは内定企業先での実施でしたが、今年度からはインターンシップ・オン・キャンパスとして実施しました。2年生の内定者が企業からテーマを提供していただき、企業の方にも大学に出向いていただき、時期も8月~9月を5月~9月に変更し、大学内で実施するインターンシップを試みました。

Q. インターンシップ・オン・キャンパスについて詳しく教えてください。

昨年度は内定企業でのインターンシップをお願いしていたのですが、1回目の時期はイレギュラーで、内定者対象の2回目の夏季インターンシップにおいても、通常、企業が1年生を受け入れている時期と重なる上に内容も変わるため、企業側の負担が大きくなっています。企業側負担軽減と当校のねらいである学習効果を維持するために学内で行うことにしました。
 内容としては、それぞれ内定企業毎にグループ分けをし、各企業から与えられたテーマについて、グループワークを行うものです。時期は2年生の5月から9月に、週1回2コマを利用して行うのですが、学生は週に2~3回は集まって議論をし、更に、夏季には集中して実施していました。企業の方についても月に2回は進捗状況を見ていただき、コメントを頂戴しています。
 各企業のテーマは、例えば「アジア向けの新しい製品を作ったのでその販売戦略を考えて欲しい」というマーケティング的なテーマや、「燃料電池の開発研究」という研究的なテーマがあり、対処方法や科学的実験を実施する現実の業務に即した形の内容になっています。 最終的に各テーマを9月末までにまとめて、10月にインターンシップのOJE発表会を実施し、企業や教授の前での発表を行い、コメントや評価を頂きました。

Q. 2回目のインターンシップは「OJE方式による演習」という授業の中で行われているようですがOJEとはどのような考え方でしょうか。

OJEとは、On the Job Educationの略で3つの学習目的を有する独自の教育方式です。学習目的の1つは、講義のみに留まるのではなく、知識と経験を蓄積し、研究開発からビジネス展開に至るまでの過程で重要となる強い判断力・決断力の育成です。2つ目は、課題から問題点の抽出と解決策の提案までを自らの判断で遂行させることで、技術のマネジメントを具体化できる能力の育成です。3つ目は、少人数グループ(3~4名)での演習による意志決定過程スキルの習得です。
 この演習は必修科目で、1年次に「OJE方式による演習1」を10月~2月の期間、2年次に先ほど説明したインターンシップ・オン・キャンパスとして「OJE方式による演習2」を4月~10月の期間、それぞれ2単位でカリキュラム化しています。 この演習の進め方は、学生を3名~4名の3つのグループに分け、それぞれ違うテーマを与えて課題を検討するもので、学生間で互いにJob(仕事・責任)を課し、学生主導で解決していく形式を採用しています。
 昨年の1年次のテーマは、「風力発電の新しいビジネスを提案する」、「特許の企業内貢献度を明らかにする」、「環境とUD(ユニバーサルデザイン)を考慮し洗濯機の新しい事業戦略を考える」というテーマを与えました。留学生ら、はじめはテーマが大きすぎて何から手をつけていいのかわからず右往左往しますが、条件を決めないと考えられないと気付きますので、序々に条件等を与えていきながら課題に取り組まさせ、課題設定→調査・問題発見→問題点分析→検討・提案→成果発表という流れで進めて行きます。
 コンソーシアム企業からの評判も非常に良く、コンソーシアム企業の方にも参加していただいて発表会を実施するのですが、質疑応答も活発で、ユニークで有意義との評価を頂いております。

Q. 企業参加の発表会というのは全部で何回あるのでしょうか。

1年次の12月にOJEの中間発表、2月にOJEの最終発表会、それからインターンシップを終了後の3月にインターンシップ発表会があります。
 2年生は7月にOJEの中間発表、10月にOJEの最終発表会を行うので、各自の発表は2年間で5回実施しています。いずれも全員参加ですので、2年間で8回の発表会に参加することになります。
 発表会での評価については、3つのポイントから評価しています。1つ目はテーマに対してどう取り組んだかということ、2つ目は、発表に対してのプレゼンテーション方法・能力についてです。3つ目は発表および質疑応答の際の日本語能力です。また、発表会の様子をビデオ撮影して、後日それを聞きながら再度学習する仕組みを構築しています。複合的な学習により教育効果が向上するように取り組んでいます。

Q. インターンシップ先のマッチングはどのように行われているのでしょうか。

インターンシップ先はコンソーシアム参加企業になりますが、インターンシップを受け入れてもらうために、企業の方と学生とのディスカッションの場として「企業戦略説明会」を設けています。まず、最初に学生と企業の接点の場を作ってインターンシップのしおりを作成します。そして本人の希望や専門性を含めてマッチングを図り、インターンシップ先を決めています。
 学生は知名度の高い企業に希望が集中します。それをなくすために、「企業戦略説明会」を10.12月のOJE発表会後の2回実施しています。通常の企業の概要説明ではなく、製品戦略や開発戦略、どういった方向で企業が進んでいるかを重点的に説明してもらうことと企業側にも学生の能力を見いだしてもらうことで、相互の理解とインターンシップマッチングの機会を創出しています。この説明会により留学生は日本人学生に比べ自身のキャリアプランをしっかり持つようになります。さらに企業の将来展望や戦略を聞くことで、自身のキャリアプランにより近い企業に対して興味を持つようになるので、自然とインターンシップ先も個々の意向に沿う様になっていきます。

Q. インターンシップによる成果はでているのでしょうか。

最終的にインターンシップを実施した企業で、その後の学生の就職活動にて就職に結びついたのが約7割というのが結果です。
 このインターンシップ事業から就職の流れで一番大事なことは、学生、企業が相思相愛となることです。学生は企業戦略説明会で初めて会社の詳しい情報を得て、興味を持つところから始まり、企業にもOJE発表会や企業戦略説明会で、学生の振る舞いやプレゼンを見て交流することで学生に興味を持ってもらう。その機会が我々には多かったというのがポイントではないでしょうか。学生も就職を見据えてインターンシップに行くことで、その企業に勤めたいという希望を持って帰ってきますが、その後の就職活動にて本人がOKでも企業側がNOだったらマッチング不成立なので、そういう意味では企業側の設けているレベルのハードルをきちんとクリアしている学生が多かった、というのが7割という結果をだと思っています。
 とにかく企業とたくさんの接点を作ることが、学生にとって企業での業務内容を知ることにもなり、企業も学生を知ることになります。また長期のインターンシップで、お互いのことを良く理解することで、ミスマッチも少なくなると思います。就職にはミスマッチをなくしていくことが最重要だと考え、行動しています。その結果、就職後の定着という部分に大きく関わるのでないかと考えております。これらの点から、この様な取り組みは非常に意義があるのではないでしょうか。

Q. 留学生におけるインターンシップの意義とはどうお考えですか?

留学生にとって、日本企業のグループ力やものづくりへの探求力、パワーを直接経験することは意義深いことだと思います。インターンシップを行うにあたり2週間という短期間では、教育的な観点からあまり効果がないと考えます。この事業を始める際、インターンシップの目的を日本企業の仕事の進め方を知ることを大前提とするのであれば、2週間ではなく4週間は必要だと考えて計画しました。
 学生のインターンシップの体験後の感想を聞くと、「今までの考え方は甘かったです」という感想を多く聞きます。OJEのチームプレーを学習してからインターンシップを行いますが、組織の中での動きというのを実践で学んで帰ってくるので、しっかりと企業で教育されてきたと感じます。また彼らは、製造現場やものづくりの現場を見て日本のものづくりのクオリティの高さ、製品化されるまでの間に、実験したりテストしたりしているのを見てここまで考えているのか、というのを実感しているようです。「こだわり」を持ってものが作られていることを知ったというのをよく耳にします。
 インターンシップは、日本企業をよく知る機会であるとともに、彼らのこれからのキャリアを考える機会としても、また日本企業に就職した後スムーズに就業していくためにも大変有効な活動であると思います。学生と企業を上手に結びつけ、マッチングしてあげることで就業後の定着につながるのではないかと考えています。

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