取り組み事例紹介

国立大学法人 一橋大学

ガイダンスと個別面談を組み合わせた積極的な支援

Q. 貴校の外国人留学生の在籍状況を教えて下さい。

本学には約6,500名の学生が在籍しており、そのうち国際交流学生・研究生を除いた外国人留学生は約520名です。学籍別では、学部が約4,500名の学生数のうち外国人留学生は約190名で学生数の4%、大学院が専門職大学院を含めると約2,000名の学生数のうち外国人留学生は約430名で学生数の約22%と、大学院の方が留学生割合は高くなっています。
 国籍は、修士課程では7割以上が中国、学部では6割が韓国で、そのほか台湾、モンゴルなど、東アジアの学生が多いです。

Q. 外国人留学生への就職支援の取り組みについて教えて下さい。

本学では次の4つを行っています。1つ目は、「就職支援イベント」です。日本人学生と合同のもの以外に、外国人留学生に特化したものを年6回ほど開催しています。大きく分けると、4・5月開催の早期の理解促進のためのものと、10~12月開催の就職活動準備のためのものがあります。
 2つ目は、「個別相談」です。個別相談は常時行っており、相談内容については就職活動の全般的な進め方、志望業界の選び方、インターンシップも含めたエントリーシート添削や面接対策、内定辞退のしかたなど多岐にわたります。
 3つ目は、「日本人との対話プログラム」です。これは、定年退職した本学卒業生などのボランティアの方が、企業で使われる日本語を留学生に1対1で教えてくださるものです。国際教育センターによる日本語教育とは別に、キャリア支援の一環として提供しています。今年度は22名のボランティアの方にご協力いただいていて、35名の留学生が利用しています。
 4つ目は、各種の情報提供です。具体的には、外国人留学生向けの『就職ハンドブック』の制作・配布、留学生向け求人情報の提供や「留学生就職支援ネットワーク」(運営:一般社団法人留学生支援ネットワーク)の利用案内などを行っています。
 また、就職支援そのものではありませんが、学部生の正規科目として「日本企業・就職事情」(冬学期、2単位)を開講しています。日本企業に独特な新卒採用への理解を深めるために、企業の採用担当者や外国人留学生OB・OGなどの話を聞いて実情を知り、最終的にはグループで「日本の新卒採用の課題」をテーマにプレゼンテーションをする内容となっ ています。

Q. 留学生に特化した就職支援イベントについて教えて下さい。

毎年試行錯誤しながら企画しており、年々改良しているのですが、今年度について時系列で説明させていただきます。
 まず4月には、外国人留学生新入生向けのオリエンテーションの中で1時間ほどかけて、就職活動のスケジュールや注意点を説明しました。本学の外国人留学生の6-7割は日本での就職を希望していますし、大学院生は入学後すぐにインターンシップの応募が始まりまるので、早期に基本的理解をする必要があります。また、留学生支援の担当者の顔を覚えてもらうことも重要なので、オリエンテーション時にガイダンスを行っています。
 次に5月末には、大手企業から内定を得た留学生3名に協力してもらい、「内定者座談会」を開催しました。夏学期は特に大学院生が勉学で多忙となるため、それ以外のイベントは開催せず、インターンシップへの参加を促すことや相談に乗ることに重点を置きました。
 就職活動準備が本格化する秋季は、まず10月に「就職ガイダンス」を実施しました。ここでは、就職活動のステップごとに留学生が陥りがちな失敗と注意点を伝えたほか、大手企業以外から内定を得た留学生2名に失敗経験とその乗り越え方について話してもらいました。
 11月には「エントリーシート作成講座」を開催しました。外国人留学生は日本語でエントリーシートを書くという負担が非常に重く、苦手意識ももっています。また、語学力の面だけでなく、アピールすべきポイントがつかめない外国人留学生が多いため、その点をサポートすることが目的です。
 11.12月には、外国人留学生OB・OGや企業との交流会として「本音で語る会」をOB・OG編、採用担当者編に分けてそれぞれ1回ずつ開催しました。日本企業に入社して2~7年目のOB・OG7名と20社の企業採用担当者が参加し、就職活動や実際の働きぶりなどについて外国人留学生が抱く疑問に答えてもらいました。

Q. 正規科目の「日本企業・就職事情」について教えて下さい。

2010年度から昨年度までは文部科学省から規定された留学生向け講義の中で、日本の就職事情を扱ってきました。今年度からタイトルはもちろんこと、目的・内容もリニューアルして新規開講しました。留学生は就職活動の真っただ中になると表面的な情報にふり回されることが多いので、就職活動の当事者となる前に、日本の新卒採用の問題を俯瞰して捉えることを目的に置いています。
 冬学期(全15回)に外国人留学生及び日本人学生を対象に開講し、学部生は2単位を取得できますが、大学院生は聴講のみとなります。
 内容は、日本的雇用慣行の形成・変容や新卒就職をめぐる問題について概観的に学んだ後、実情を理解するために、企業採用担当から新卒採用と外国人採用のお話を、外国人従業員(留学生OB・OG)から経験談を聞き、さらに模擬面接により日本の就職活動の特徴を体感します。最後に「日本の新卒採用の課題、およびその中での外国人留学生の採用の課題」をテーマにグループワークを行い、授業の最終回でプレゼンテーション大会を実施します。

Q. 「個別相談」について教えて下さい。

個別相談は、就職支援イベントやホームページなどで案内し、予約制で行っています。年々利用率が上がっており、大学院生に限ると、昨年度は外国人留学生の在籍者の約3割が利用しました。
 実は、昨年度は進路インタビューというものも実施しました。留学生にこちらから声をかけて、日本に留学した理由や日本で就職を希望する理由、就職活動の不安などをインタビューしました。インタビューとして始まっても留学生からの相談に発展することが多いので、困ったときに相談できる場所だと認知してもらえるのではないかと考えたのです。これまでは学生の利用希望を待つという受け身の態勢でしたが、待っているだけでは留学生を十分にサポートできません。このように、支援者側から積極的にアプローチすることにより、個別相談の利用率向上に繋がってきていると思います。

【取材者感想】

留学生支援に必要な取り組みをバランスよく、しっかり行っている印象を受けました。また、一つ一つの取り組みの中にしっかりとしたコンセプトや細かい工夫が数多くみられよく考えられた支援プログラムである印象を受けました。
 早期からの日本の就職活動への理解促進や外国人留学生のOB・OGをうまく利用したガイダンスの構成、正規科目での日本の就職活動理解等による基本的な日本の就職活動への理解促進、その後の面談による個別支援の流れを上手く構築されていました。また、個別面談については、積極的に留学生とコミュニケーションを取るなど受け身の支援でなく積極的な支援を行っていることに感心しました。

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