岩手県外国人留学生就職支援協議会【東北地域】
Q. 貴団体について教えて下さい。
岩手県内に就学する外国人留学生の県内企業への就業を促進し、県内産業界の国際化に寄与する事を目的に平成19年8月に設置しました。協議会の構成としては県内の留学生が在籍する高等教育機関として岩手大学、岩手県立大学、富士大学、国際交流に関わる業界団体から、ジェトロ盛岡貿易情報センター、公益財団法人岩手県国際交流協会、岩手県商工会議所連合会、岩手県中小企業団体中央会、地方自治体からは、岩手県環境生活部若者女性協働推進室、岩手県商工労働部観光部産業経済交流課、岩手県南広域振興進行局経営企画部が参画しており、事務局の幹事は岩手大学教育推進機構が行っています。
事業内容は、県内企業就業に関する留学生への情報提供、留学生と県内企業との交流、県内企業への留学生インターンシップの支援を主としています。
Q. 具体的にはどのような事業を行っているのでしょうか。
大きく分けて2つの事業を実施しています。
年度によって実施している事業が変わります。基本財源が無いので国や自治体の事業とタイアップして行うケースが多いです。設置した初年度については、留学生就職支援フォーラム、県内企業関係者と留学生の交流会を実施しました。
平成20年~22年については、経済産業省、文部科学省共同事業である「アジア人財資金構想」事業とタイアップして、インターンシップや留学生向け就職支援講座、外国人留学生雇用開発セミナー、企業訪問バスツアー等を実施しています。
平成23年は自主事業として外国人留学生向け就職支援講座と留学生向けSPI対策講座を実施しています。
平成24年度は、岩手県委託事業である「東アジア留学生就職支援業務」とタイアップして留学生就職支援セミナーや企業向けセミナーを実施しています。
平成25年~26年については、中小企業庁の「地域中小企業の海外人材確保定着支援事業」とタイアップして就職支援セミナーを中心に実施しています。
Q. 就職支援セミナーではどのようなプログラムで実施しているかを教えて下さい。
年度によって内容は違うのですが、たとえば24年度であれば、2回実施したのですが、1回目は2日間(1日6時間)かけて就職活動の流れと進め方、留学生の就職事情など就職活動の全体像をまず知ってもらい、ワークショップで岩手県の産業・企業の理解、エントリーシートの書き方、筆記試験の演習、ビジネスマナー、面接ロールプレイング等の企業理解から試験対策を行い、企業人事の方にも来ていただき交流会も実施しました。
2回目は、ワークショップを中心にエントリーシートの作成、面接のロールプレイングを行いました。また、2回目は留学生OB・OGにも来ていただき就職活動、就業の体験談を話してもらいました。
Q. 企業の留学生採用の動向について教えて下さい。
海外に目を向けている企業は増えてきていると思います。震災後、岩手県は比較的復旧のスピードが早かったと聞いていますが、現在復旧した企業は海外の販路を探す事に困っているというのが現状です。輸出意欲は強まっていますが、輸出に取り組む企業の多くが商社にお願いしてしまうケースが多くみられました。このような企業にとってみれば国内取引で終わってしまうので、その対象国のビジネス経験のある人材をさほど求めてはいないようです。
しかし、最近では直接輸出をするという会社が増えてきていて、尚且つ間接貿易をされている企業の中でも、自社商品の動向を知るために貿易についての問合せが多くなってきています。大企業であれば企業の中に海外営業部門があるので、専門的な仕事に携わる人材がいると思うのですが、中小企業、小規模会社になると専門的な部門が少ないため、海外とのビジネスを行う上で、どこから手を付けていいのか分からない、といった声をよく耳にします。こういった流れの中でジェトロでもいわゆるグローバル人材の「育成」と「活用」という2つの方面からのサポートを行っているところです。また、外国人留学生の「活用」は、海外ビジネスに取り組む企業にとって大きな戦力のひとつとなるのではないかと考えています。
Q. 今後の展望について教えて下さい。
留学生採用は、今後企業の海外展開や取引の需要が増えてくることが予想されるので、ニーズが高まることが予想されます。協議会については、7年間留学生の就職支援を実施してきて一定の成果は上げられたと考えているので、国の事業や自治体とうまくタイアップしながら、引き続きできる範囲で支援活動を継続して行っていきたいと考えています。
【取材の感想】
留学生の就職支援については、全国の大学、支援団体で共通しているところが財源の問題です。今回取材をして自主財源が無い中でも7年間という長期にわたり様々な工夫をしながら留学生就職支援事業を継続してこられたことに敬服しました。
思いのある人が中心に、少ない財源の中でも工夫して可能な範囲で支援を「継続する」事の大切さを再確認できました。