取り組み事例紹介

大学コンソーシアムひょうご神戸【近畿地域】

留学生のニーズや目的に応じた2種類の留学生インターンシップ

Q. 貴団体について教えて下さい。

「大学コンソーシアムひょうご神戸」の発足は、2005年(平成17年)11月11日に開催された兵庫県下大学学長会議において「県下大学コンソーシアム機能の強化について意見交換がなされたことに端を発し、2006年(平成18年)6月12日に発足しました。
 現在、兵庫県下の44校(34大学、9短期大学・短期大学部、1高等専門学校)が加盟しています。“国際性”を中核に、兵庫県および神戸市の特性を活かしながら、国際交流、学生交流、研修交流、教育連携、高大交流、地域交流、社会連携の各事業ついて、4つの事業委員会(国際交流委員会、学生交流委員会、研修交流委員会、教育連携委員会)を設けて事業を展開しています。

Q. 留学生の支援事業はどのような事を行っているのでしょうか。

大きく分けて2つの事業を実施しています。
 1つは留学生インターンシップ事業です。平成20年に文部科学省の「戦略的大学連携支援事業」の採択を受けて、その事業の柱の1つとして留学生インターンシップ事業を実施しました。初年度は5月から準備を始めて、翌年の2,3月にトライアルとして8大学18名で実施しました。2年目は夏季に実施し、11大学46名が参加しました。平成22年で事業終了したのですが、大学・企業からの評判も良かったため、平成23年度以降は、コンソーシアムの自主事業として4年間実施し、これまでに約260名の留学生が参加しました。
 もう一つの事業は、留学生の就職支援事業であり、兵庫県から受託事業として平成23年から単年度事業として留学生の就職支援事業・中小企業の海外展開支援関係の事業を実施しており、平成26年度は、「中小企業グローバル化支援事業」の採択を受け、企業・大学関係者向けグローバル人材活用セミナー、県下の外国人留学生のための合同企業説明会、OG・OBとの車座懇談会、就職活動支援セミナー、経営者との懇談会等を実施しています。

Q. 留学生インターンシップ事業の特徴について詳しく教えて下さい。

当団体のインターンシップを説明する前に、当団体で実施するインターンシップについて目的を説明します。
 1つ目は兵庫県内の大学に在籍し、日本での就職を希望する留学生に教育の一貫として企業・団体・行政機関等でのインターンシップを実施し、就職の為の企業理解の一助とする。加えて就職のための支援を行う。
 2つ目は、企業の経営者に留学生の特性と日本企業で働きたいという強い意志をご理解頂き、留学生の採用に向けた支援を行う。
 この目的に基づきインターンシップを実施しているのですが、3つの特徴があります。
 1つは、外国人留学生に特化したインターンシップであること。単独の大学ではこの事業を行うのが難しい加盟校もあるので、大学コンソーシアムで実施する意義があります。大学毎に留学生の在籍数に合わせた推薦枠を設定して、各大学から推薦された学生を個別に面談して、学生の希望と特性を勘案して事務局でマッチングを実施しています。
 2つ目は、留学生のニーズや目的に応じた「テーマ型」と「就労体験型」の2種類の型のインターンシップを実施しています。
 3つ目は事前研修、事後研修などの指導体制を確立しており、事前研修としては、オリエンテーション、目標設定、ビジネスマナー研修、チームワーク研修等を実施しており、事後研修については、振り返り、報告書の作成、発表準備、報告会まできめ細やかに指導を行う事により、学習効果を最大限に高めるインターンシップを実施しています。

Q. 「テーマ型」と「就労体験型」のインターンシップの違いについて教えて下さい。

「テーマ型」は、企業から提示されたテーマに基づき、参加留学生が大学で学んだ専門知識や留学生の特性を活かして企画、研究、データ分析を行い、結果を受け入れて頂いた企業の経営者にプレゼンテーションするインターンシップです。テーマ型インターンシップでは、最初に経営陣から企業理念の説明をして頂き、「あなたはどのようにアジア市場開拓をおこないますか?(ダイレクトマーケティング)」や「女性が働きやすい環境~社員の成長と幸せのために~(商社)」等の与えられたテーマについて、現場での就労体験を経て、調査・データ分析、発表準備を行うので1ヶ月~1ヶ月半を要します。
 一方で「就労体験型」は、企業理念を理解し、企業での実務を体験することにより日本で働くことを学ぶインターンシップです。実施内容については、工場の管理業務補助やHPの商品紹介の翻訳、店頭業務体験、税関・倉庫見学等で、原則1週間~2週間の期間で実施しています。

Q. 事前・事後教育について教えて下さい。

事前研修については、まず、6月に「推薦学生ガイダンス」を実施します。ここではインターンシッププログラムの概要や受入企業の業務や実習内容を説明し、OB・OGから体験談等も話してもらい、インターンシップの動機付けと、実習先選択の支援をしています。
 7月には、オリエンテーションを行い、各人のインターンシップの目標設定、リスクマネジメント研修に加えて、キャリアに対する意識付けを行う為に就職支援セミナー(1)も開催しています。インターンシップの前の8月に事前研修を2回実施しています。1回目はビジネスマナーの理論と実践、グループワークによる目標設定の見直し、就職支援セミナー(2)を実施しています。2回目は、チームワーク研修を実施しています。これらの研修の後、スタッフが同行して実習先への事前訪問を実施してからインターンシップ実習を行っています。
 事後研修については、10月初旬に実習の振り返りとグループワークによる経験の共有、実習発表会の準備、就職支援セミナー(3)などを行い、同月中旬に全実習生、企業関係者や大学関係者等約110名が参加する報告会を開催しています。
 また、実習生と企業には、事前・事後で「ビジネスマナー」、「チームで働く力」、「企業理解」等9項目を4段階の評価をしてもらい数値化した上で個人別、大学別にフィードバックしています。

Q. インターンシップ事業の成果と今後の展望について教えて下さい。

留学生は、インターンシップを経験することにより、日本語能力、社会人のマナーについて多くの気付きを得て帰ってきます。自分では出来ると思っていても、実際に社会に出て体験してみるとできない事があることに気付くことが多いようです。日本語についても大学で使っている言葉と働くときに使う日本語は違うという事を体験し、もっと勉強するようになる。また、いろんな人と一緒に働くことで人に対する配慮等に気付いてくれる。
 今後は現在ご協力いただいている受入企業の皆様に引き続きご支援をいただき、留学生に役に立つプログラムを企業の方々と一緒に作成して、そこに留学生を送り出すような関係を作っていきたいと思っています。また、受入企業の業種についても、参加者の大半を占める東アジアからの女子留学生の希望が多い非製造業、小売り、サービス業等の受入先を広げて行かなくてはならないと感じています。

【取材の感想】

インターンシップ事業については、キャリアを考える為のインターンシップという位置付けがしっかり事前・事後の研修で行われていることが印象的でした。
 特に、留学生と企業に対して、評価指標をしっかり数値化できるツールを作成し、事前・事後、自己評価、他者評価の2つの観点から確認していくという手法は留学生にもわかりやすく、すばらしい取り組みだと思いました。
 留学生インターンシップは、留学生の日本でのキャリアを考える上で非常に意義深い取り組みだと思います。全国でも専門に行っている大学、団体が少ないので今後全国に広まっていくことを期待します。

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