取り組み事例紹介

広島県留学生活躍支援センター【中国地域】

産官学が協力して実施するワンストップ支援

Q. 貴団体設立の背景を教えて下さい。

広島県では、平成20年3月、「広島県人づくりビジョン」を策定し、「国内外から人材が集まる魅力ある元気な広島県を目標に「国内外からの学生の受入れ促進」や「多様な能力を発揮できる環境整備」などを取り組むべき内容として掲げています。
 これを受け、平成21年5月には大学や留学生の関係団体で構成される「広島県留学生受入促進等研究会」を設置し、留学生支援事業や組織体制の整備について提言を行いました。この提言により、大学、日本語教育機関、経済団体、行政等で構成する一元的な留学生支援組織の設立に向けて検討した結果、平成23年4月に「広島県留学生活躍支援センター」が設立される運びとなりました。
 「広島県留学生活躍支援センター」は広島県内の産学官のコンソーシアムであり、優秀な留学生の受入促進から勉学・生活・就職支援などを総合的に行っています。設立当初は大学連携組織である一般社団法人教育ネットワーク中国に新規事業部門(留学生支援)として設置されましたが、平成24年4月に事務局を地域国際化協会である公益財団法人ひろしま国際センターに移管して総合的な留学生支援事業を行っています。

Q. 広島県留学生活躍支援センターの事業範囲について教えて下さい。

当センターでは、留学生の受け入れから就職までの幅広い範囲の様々な支援を行っています。受け入れ事業は、広島県内の大学・短期大学、日本語学校の留学環境を説明した広報資料の作成やホームページの運営や、日本語学校等に在籍する学生の広島県内大学の進学についての進学説明会を開催しています。
 勉学・生活支援事業としては、民間宿舎の情報提供や民間宿舎に住むために必要な連帯保証の制度の提供、奨学金の支給、日本語学習支援、日本文化理解を促進するための行事、地域と留学生の交流、多言語での相談業務を行っています。
 就職支援については、学生向け支援事業としてインターンシップ、就職活動を実践的に習得する就職セミナー、キャリアコンサルタントによる就職活動個別コンサルティングを実施しています。一方、企業向け支援事業としては、企業の留学生の採用や定着を促進するため、留学生活用セミナーを実施しています。さらに、留学生と企業のマッチング機会を促進するために合同企業説明会、企業と留学生の気軽な出会いの場を創出するための企業・留学生交流サロンを実施しています。

Q. 留学生向けの就職支援事業の詳細について教えて下さい。

インターンシップは昨年度までは、夏期のみ実施していましたが、就職活動期間の変更に伴って今年度からは夏期・冬期に拡大し、通年で実施しています。
 また、県内企業を理解することを目的に1日コースの企業見学ツアーを広島、福山、東広島3エリアで実施しました。企業見学ツアーは想定以上の留学生が参加し、企業の反応も良かったので来年度以降もさらに拡大していきたいと思っています。
 就職セミナーについては、昨年度まで学部2年生を対象に入門編と学部3年生向けの実践編に分けて開催していましたが、昨年度の事業検証の結果、入門編については、キャリア教育の一環として各大学で実施することとし、実践編を2日から3日に増やし、就活に必要な自己分析や企業分析、ビジネスマナーや面接等のロールプレイングを通じて就活のためのスキルアップを目指しています。
 また、個別コンサルティングについては、電話やメールのほか、Skypeを利用したコンサルティングを開始するなど、利便性を考慮した取組を行っています。

Q. 企業向けの就職支援事業の詳細について教えて下さい。

企業向けには、留学生活用セミナーを年に2回開催しています。毎年開催しているため開催内容が重複しないよういろいろ工夫しています。今年は、2回目の開催を2部制として企業間の意見交流を目的に、2部では課題を設定した分科会形式を採り入れました。分科会は「大学のグローバル化と留学生の受け入れ」、「留学生の受け入れと進路」、「就労ビザの取得と課題」、「理工系留学生の採用と定着」、「文科系留学生の採用と定着」、「イスラム圏留学生の採用と定着」、「多様な留学生の採用と定着」、「インターンシップの効果と課題」の8つのグループに分け、ワークショップ形式で自由な意見交換を実施しました。
 また、合同企業説明会では全国中小企業団体中央会が実施する地域中小企業の海外人材確保定着支援の受託者の株式会社メイツ中国と連携し、中国5県を対象とした合同企業説明会を実施しました。これまで実施してきた広島県内の合同企業説明会に比べ企業、留学生ともに多くの動員を行う事ができました。
 また、県内企業の経営者や人事担当者に留学生を理解してもらうため、事業終了後に「留学生交流サロン」を開催しました。合同企業説明会等の選考の場と違い、リラックスした会話は企業の留学生採用の促進につながるものと期待しています。

Q. 課題と今後の展望について教えて下さい。

我々は、これまでに数多くの留学生の支援を行ってきました。これまでの3年余の蓄積で事業の形は確立しつつあります。
 しかし、県内の外国人留学生約2千人のうち、我々センターの事業と関わりを持ってくれている人は、まだ一部に過ぎません。まずは、より多くの留学生、留学しようとする人に我々の活動を知ってもらい、広島に留学し、生活していくための支援を少しでも拡大できればと考えています。また限られた人員や財源の中でより多くの留学生への支援を行うためには、国や県、大学、産業界との協力関係をより深め、これら機関との役割分担を考えながら、絶えず事業のブラッシュアップをしていく必要があります。
 さらに言えば、新たに活用できるリソースを発掘し、社会環境の変化に合わせた新たな事業、新たな支援センターの形をつくり上げていくことも必要だと考えています。
 我々はこれまでも、そしてこれからも、広島に一人でも多くの留学生に来てもらい、定着してもらう、そして広島に留学してよかった、と思ってもらえる取組を続けていきたいと考えています。

【取材者感想】

非常に広い範囲での支援がワンストップで行われている印象を受けました。
 特に就職支援については、企業と留学生を採用活動前にいかに相互理解を深めるかというポイントに重点を置いた取り組みが印象的でした。
 県内企業に対しては、留学生活用のためのセミナーを含めた啓蒙活動を毎年継続して実施している点や、新たに留学生との接点創出を行う取り組みにより県内企業の留学生採用が広がりを見せていることが窺えました。
 一方で留学生への支援については、就職活動前に県内企業の理解を行えるようインターンシップや企業見学ツアー等にも注力されており、参加した留学生はスムーズに就職活動を行えるのではと思います。

↑このページのトップへ