取り組み事例紹介

パナソニック電工株式会社

〈業種〉電気機器 ─〈分類〉コミュニケーション(対人適応)

能力発揮と定着率向上のためのクロスカルチャー研修

Q. 外国籍社員活用の背景と現状を教えてください。

当社は、パナソニック株式会社のグループ企業であり、事業領域としては、環境・省エネ、健康、安心・安全、快適・便利といった社会ニーズに対応した快適空間商品・システムおよび電子材料・制御機器などを開発・製造し、グローバルに販売しています。製品ブランドはかつてのNational(ナショナル)からPanasonic(パナソニック)に統一をし、今後、海外売上高比率を2008年3月期の18%から40%に高めていくことを目指して積極的にグローバル展開を進めています。
 当社における外国籍社員採用の特徴は「ダイバーシティ・マネジメント(多様性)」という視点です。当社におけるダイバーシティ推進活動は1985年に男女雇用機会均等法への対応からはじまり(第一期)、その後2004年の女性躍進活動(第二期)を経て、第三期にあたる現在は女性(性別)・外国人(国籍)・障がい者(障害有無)の三本柱へと進化をしています。
 女性社員の能力発揮促進については2006年度の厚生労働省「均等推進企業表彰」で当該年度の全国最高位となる「優秀賞」受賞をはじめ、その後も各賞を受賞し、2009年6月には東洋経済新報社主催の「ダイバーシティ経営大会」で大賞を受賞しました。また、役員・管理職を目指す女性社員をサポートするためにメンター制度などを導入しています。人材のグローバル化については、海外事業を拡大する中で、日本人のグローバル対応とあわせ、本社においても内なる国際化が必要との考えもあり、積極的に外国籍社員の採用を進めています。現在、合計51名の外国籍社員がおり、国籍も中国、韓国、インド、アメリカ、ウズベキスタン、コロンビア、スリランカ、ドイツ、フランス、モンゴル、イタリア、スイス、タイ、トルコ、インドネシア、ベトナムと16カ国から構成されています。配属先は本社のスタッフ部門や研究所をはじめ、電器、照明、情報機器、住設建材、電子材料、制御機器と当社の事業領域全般に幅広くわたっています。

Q. 外国籍社員のよりよい活用や定着に向けた課題はありますか。

当社に入社した以上、長期にわたって本人の持つ能力をいかに最大限発揮してもらうか、これが大きな課題といえます。このような課題認識のもと、先日、人事として外国籍社員全員との面談を行いました。そこで見えてきたことは、入社後、一定の時間がたって、業務に適応するにつれて、今度は「どのように自分の強みを生かしていけるか」「どのような姿を目指してキャリア形成をしたらいいのか」という悩みがでてくるということです。これらの悩みを本人や職場だけに任せるのではなく、人事として支援していくために「能力発揮サポート」としていくつかの研修を実施しています。また、採用面では留学生を対象とする場合、どうしても文系学生が多く、理系学生が少ないという傾向が見られますので、今後は自社説明会やオンキャンパスセミナーを通じ、母集団を多くし、できるだけ多くの優秀な学生との接点をつくっていくことも課題です。

Q. 取り組んでいる研修についておしえてください。

「能力発揮サポート」は外国籍社員が入社後に働きやすい環境を整備して能力発揮と定着率向上を図ることを目的としています。
具体的には
①「ビジネス日本語研修」
②「クロスカルチャー(異文化)研修」
③「経営理念研修」からなっています。
 ①「ビジネス日本語研修」については、入社前に日本語を勉強してきたとしても、ビジネスレベルでの日本語は入社してからはじめて学ぶという状況ですので、社員の日本語レベルに応じてクラス分けをし、週2時間・3カ月のコースを年2回、開設しています。
 ②「クロスカルチャー(異文化)研修」は入社一年目の社員と職場上司を対象に1日かけて実施します。クロスカルチャー研修ではお互いにスムーズに仕事を進めるために日本・海外における働き方の違いを理解して進めるというもので、職場におけるコミュニケーションの問題などを上司と外国籍社員の研修参加を義務付けたうえで取り上げています。これは単なる座学ではなく、事例なども紹介しながらワークショップ形式で進めます。一般論ですが例えば会議の進め方についても、日本では参加者全員で、ある程度時間をかけ合意形成をする傾向にあるのに対し、海外では個人が即断して行動していくような違いもあります。このような研修を通じ、まずは考え方や仕事の進め方の違いをお互いに理解し、その上でよりよい形で仕事を進めていくことができるようになることを目的としています。
 ③「経営理念研修」は外国籍社員を対象に半日かけて実施するもので、創業者である松下幸之助の考え方をはじめ経営基本理念、綱領、信条、遵奉すべき精神などを学び、ビジョンの確認や意味付けを行います。これらは入社時研修の際に日本人新入社員とともに学びますが、外国籍社員がより理解を深めていくために個別に実施しています。

Q. 今後の取り組みについてお考えはありますか。

クロスカルチャー研修を通じて、お互いにスムーズに仕事を進めていくことを目指すとともに、今後は外国籍社員の持つ強みをいろいろなシーンで発揮してもらえるように人事としても工夫をしていきたいと思います。これは業務上の活動だけでなく、社内行事など、幅広く考えられると思います。同時に日本人社員の異文化対応力・グローバル対応力をつけていくことも課題ですので引き続き対応をしていきたいと思います。

〈企業情報〉
パナソニック電工株式会社
(Panasonic Electric Works Co., Ltd.)
設立 1935年12月15日(昭和10年)
決算期 3月31日
本社所在地 大阪府門真市大字門真1048番地
東京本社所在地 東京都港区東新橋1丁目5番1号
資本金 1,485億円(2009年3月31日現在)
売上 1兆5978億円(2009年3月期)
従業員数 単体12,240名 連結56,848名(2009年3月31日現在)
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